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3年生でスタメンとして試合に出ているのは、主将ともう1人の2人だけ
それでも、この一言には
「稲荷崎は挑戦し続けるチームや
古き良きものを守ってくだけやなくて、挑んでくのに侑達なんかはピッタリやと思うし
あーゆー奴らにこそ似合うスローガンやなぁって思う」
どちらかと言えば
主将は個性の強い2年生、1年生と比較すると
目立たず、職人のような丁寧な仕事をするタイプ
「でもな、
それでも俺らはこのスローガン背負って戦ってきてん」
3年生は声を荒あげたり、圧をかけるような先輩たちでは無かった
ただ、彼らにボールがいけば安定したレシーブをかえしてくれる
拾ってくれる
彼らがいてくれれば大丈夫だと思わせるような
そんな人たち
「このスローガンを見るとやっぱ奮い立つもんがあるし、これが
誇らしく思う」
3年生は
スタメンを後輩にとられて自分が控えになっても
腐ることなく
センスで突っ走ってきた彼らのデコボコを補うように
彼らが丸くなれるように見守っていた
「アイツらには稲荷崎らしく自由にやって欲しいねん
伸び伸び、やりたいようにやればええ」
3年生になったら、私達もこんな風に大人になれるのだろうか
少なくとも今は想像も出来ないけれど
「それも全部、思い出になんねん」
『…やっぱり思い出は必要ってことですか？』
難しい話に顔をしかめる私に
「んー、せやなぁ。必要ってよりかは…
思い出はそこにあるもんやろ？」
『？』
「Aにもいつかわかるで」
ケラケラと笑う先輩は
整頓が終わった棚を丁寧に拭いていた手を止める
「俺たちの“思い出”の中にAがおって良かったわ
ありがとうな」
3年生はいつも優しかった
ー
「高いもん取る時届かへんかったらいつでもいいや〜」
「ほい、修学旅行の土産
選手にはみんな同じのやけど、Aにだけ特別やからあいつらには内緒な」
「A、いつもありがとうな」
ー
1年生と上手く馴染めずにいた頃から
声をかけてくれたり気にかけてくれていた先輩たち
「大掃除すんのもこれで最後やからな
3年間、お世話になった体育館やし。感謝込めて綺麗にせな」
文句も言わず、掃除を続ける3年生は
サボりがバレて北さんに喝をいれられる1年生たちを見ながら
「あいつらは元気やなぁ」
と笑っていた
『……』
3年生がいなくなる
胸がズキンと傷んだ
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作者名：りな∞
| 作成日時：2023年11月6日 1時
