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ページ37

「侑、そこ拭き残しとる。丁寧にやれ」

「ぅ…っ」

「返事は?」

「はい!」

12月31日

大晦日は春高本戦を目前に、調整練習のあと
部全体で大掃除が行われる

「家でもこき使われんのになんで部活でまで掃除なんてせなあかんねん…」

侑はぶつくさいいながら雑巾を絞る


「ぁー、水冷たっ!最悪や…」

『侑』

「お?」

『これ、使ったら?』

差し出すのはゴム手袋

冷たい水も、洗剤も

爪先まで丁寧にケアをしてこだわるセッター()の指先を荒らしかねない


「あ、ありがとぉ」

『水は手荒れしやすいから気をつけてね』

「…ん、」



「Aー、ちょおきて」

3年生に呼ばれて倉庫の方に向かう


「中のもんも断捨離して整理せなあかんと思ってな」

『そうですね』

こまめに掃除はしていたけれど、必要の有無が判断つかないものは特に手をつけずにきた


「俺らだけやと進まんから、一緒に頼んでもええか?」

『私で良ければ』

「Aがええねん」


3年生は

アランさんのような全国屈指のエース
侑のような絶対的センスと才能を金揃えるセッター

といった肩書きをもつ目立つ選手はいない


銀たちの話ではみんな各々中学では活躍し名前を残してきた選手なのだと言うし

稲荷崎(ここ)で3年間バレーボールをしている時点で、彼らも充分な力のあるアスリート達だ

『そういえばこれ、なんですか?』

「おー、それ懐かしいなあ」

絶妙に邪魔なところにある千羽鶴

「それな、黒監がウチきて初めて春高出た時の代が作ったんやって」

「いちいち試合持ってったりはせーへんけど、ずっと見える位置にってここにあんねん」

『…へえ、』


思い入れのあるモノだから誰も何も言わず、どかしもしないのか


と納得しつつ



でも、

「思い出なんかいらん、言う割にセンチメンタルなことするやんけとでも言いたげな顔やな」

『!?』

図星をつかれて目をそらす私に、3年生は顔を見合せて皆で笑った

『皆さんはあのスローガンどう思ってるんですか?』


「…そやなぁ
あの言葉背負って3年間やってきたけど、好きでも嫌いでもないかもな」

主将は千羽鶴を見つめたまま

優しい声で続ける


「俺らの代は目ぇ引くようなスターはおらんけどそこそこの奴らが集まって

そこに、一目置かれる後輩たちが入ってきて

今年はインハイも結果残して春高も出られる」


先輩たちは黙って主将の言葉に耳を傾ける

「俺は思い出いっぱい欲しいもん」

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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時

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