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ページ21

Aちゃん、試合見に来てよ!

そう言っていた飛雄が

“来なくていい”

唇を噛みながら悔しそうに言った

“及川さんっていうすごく上手い人がいるんだ!”

入部したばかりの頃の彼は目を輝かせていたのに


私が周りとの差に打ちのめされて腐っていく間に

彼は、確かに王様になっていて



コートでたった1人だった

飛雄の上げたトスを誰もとりにいかない

焦る顔と

怒鳴り声が響くコート


(ほら、飛雄だって
バレー、全然楽しそうじゃないじゃん)

そう思った

“A!一緒にバレーやろう”



「それの何があかんの?」

話を聞き終えた侑は平然と言い放った


「俺も同じこと言うたと思うわ」

その目には一切の迷いもない

「そもそも俺のトスで決められんようなポンコツはチームに要らんねん」

『侑は嫌われるの怖くないの?』

「何が怖いん?

こっちは打てるはずのトスを
それもスパイカーの力の最大限を引き出せるトスをあげたってんのにそれについてこられず

挙句文句言うようなやつに何言われたって意味ないわ」

彼の発言の裏には

それを言えるだけの正確さ、技術

そして努力がある


「中学の頃もグチグチ言うやつはおったしサムにも俺は嫌われとるんやと言われたことがあるけど

今も俺は俺のやり方が間違うとるとは思ってへんし」

メラメラと彼の瞳の中で揺れる炎

「俺にはサムがおるしな」

治はどんなトスにもついてくるという揺るぎない信頼


そして、侑は必ずあげるという絶対的な信頼


『やっぱり双子ってすごい』

「なんや、Aちゃんも入って3つ子になるか?」

『ううん、いい』

「なんでやねん」



いつの間にかバスを降りて家の前まで来ていて

「Aちゃん、毎朝この距離かけて一番乗りしとんの」

『朝イチだからバスも混んでないし余裕だよ』

「何時起きなん」

『遅くても5時には起きる』

「ひぃ…」

『早起きは苦手じゃないしね』

感心した侑が「ふえっくしゅ!」とくしゃみをする

『大丈夫?冷えた?』

「ん、へーきへーき」


『あったかい飲み物でも出すよ、上がってって』


「いやええよ!そんな」

『うちどうせ誰もいないし、気遣わなくていいから』

どうぞ、と扉を開けると

侑は「お邪魔します、」とおずおずと中へ入ってきて

「おとんは?」

『仕事』

「…ぁー、」


『適当にくつろいでて』


ソファに促して私は飲み物とちょっとしたお茶菓子を用意する


『おまたせ

…って何見てるの?』

「これ、」

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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時

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