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そう言って手渡されるビー玉
『…くれるの?』
「夏祭りの思い出言うたらビー玉やろ」
そんなの初耳だけど
『うん、ありがとう』
「元気でた?」
『え?』
「最近のA、なんか変やんか」
倫の話では、この夏祭りを言い出したのは治らしく
わざわざ私に色んなものを食べさせてくれるのも
ビー玉をくれるのも
花火に連れ出してくれたのも
全部、私を元気づける為だったのか
(それ、治がしてもらって喜ぶことでしょ…)
アホだなぁって思いつつ
そんな彼の優しさが嬉しくて、愛おしくて
『出たよ。ありがとう、治』
と言えば治は少し安心したように笑う
『私ゴミ捨ててきちゃうね』
「俺も行く」
『大丈夫。デカイのはウロウロせずにここでじっとしてて』
一つにまとめたゴミ袋を、近くのゴミ箱まで捨てに行く
(あれ以上居たら泣いてしまうところだった)
もう逃げたくないって思ってたのに
私はまた、飛雄から逃げてしまった
あの子を傷つけておいて
今更かける言葉も、合わせる顔もなかった
“俺たちあいつとバレーしてても楽しくなかったもん”
“Aちゃんだってそーゆー所に嫌気がさして逃げたんじゃないの?”
“俺たちは同じコートに居るから逃げられなかった
ああするしかなかったんだよ”
私が、あの子から逃げてしまったのは
飛雄に嫌気がさしたんじゃなくて…
グイッと急に腕を引かれる
「あぶね!すんませんー」
いかにも陽キャの集団とぶつかりそうになった所を誰かが引っ張ってくれたので無事回避
その腕の主を確認しようと振り向くと
『…宮、くん?』
狐の仮面を被った長身の男の子
「人混みなんやからぼーっとしてたら危ないやろ」
『なんで侑君がここにいるの?』
「…1人は危ないかなって思っただけや
案の定ぶつかりそうになっとるし」
『…ごめん』
「あんた、顔はええんやからあんま1人でフラフラせんほうがええんちゃう」
掴んでいる腕を離して貰えないまま侑はどんどん進んでいく
「サム達が…あんたが元気ないって言うとった」
『…!』
「俺のせいか」
『え?』
「俺が、嫌なこと言うたからなん?」
『いや、違うよ…』
「…すまん」
『……え?』
「部活、頑張ってるのも分かってたのに
てか…普通にやりすぎてたと。…思うし
すまんかった」
彼から謝罪の言葉が出るなんて夢にも思わず
「今更やと思うけど、俺のことも侑でええし
これからも部活の一員としてよろしく頼んます、
A…ちゃん」
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りな∞(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!これからも心を揺らすお話をお届け出来るように頑張ります!楽しんでいただけると嬉しいです🥺 (10月29日 20時) (レス) @page45 id: 6423446c77 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 心がギュッとなってとても動かされました!!続きがとても気になります🥹 (10月29日 14時) (レス) id: 9f951b305f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年10月9日 4時