淡雪が溶ける頃【HQ】/稲荷崎

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北さんは少し驚いたような顔をして

『…宮君が言ってたこと、納得できるから

少しでも、みんなの気持ち分かりたくて』


「…ほおか」

下を向いていた私の視界に、北さんの腕がうつる

「こうやって、この面で当てんねん」

『は、はい』

「アラン、ボール」

「おぉ」

アランさんが出してくれたボールに

私のレシーブが綺麗に上がる

『倫よりわかりやすい、！』

「悪かったな」



「前より上手なったな」

『え？』

「…程々にせえよ
学生の本分は勉強、部活をやると決めたんやったら部活も
やるべき事をちゃんとやりや」

『はい！』

北さんとアランさんは屋上を出ていく


「もしかしてだけどさぁ」

『…』


「北さんのこと、好きなの？」

『なんで』


「…顔、真っ赤」

『っ!!』

カシャっと鳴ったシャッター音に慌てて倫を睨む

『ちょ、消して！』

「大丈夫人に見せたりしないよ
Aが俺に反抗しなきゃね」

『悪魔なの？』


・・・

「南、ボール出し入って」

『…え』

「返事」

『あ、はい、！』


それは、突然の事だった

メニューの構成上、たしかに誰かがボールを出しをしなければいけない


『あの、でも…』

「なんや。やれへんのか？」

『い、いえ』

(眼圧…)

北さんの圧に私は頷くことしか出来ない

最初にスパイクを打つのは治

『い、いきます』


床にボールが叩きつけられる音がして

「治、ナイスキー！」

「うっし！」


「A、次」

倫もなんなくスパイクを決める


1番驚いた顔をしているのは
今回私のボール出しでセッターをしている宮侑だった


笛がなってメニューが切り替わると、水を飲みに散らばる選手

「南。急やったのにすまんな
助かったわ」

『北さん…』

北さんは、もうできると私を信用して声をかけてくれたのか

ただ人手不足で誰でもよかったのか

分からないけど、そんなことはどうでも良くて


「ほんで、一応今日で2週間。仮入部期間が終わった訳やけど…


今もまだ、南の入部に反対の人は？」

終わりのミーティングで黒須監督の言葉に

だれも手を挙げなかった

宮侑は恨めしそうな顔で私を睨んでいたけれど、周りがもう私を拒む空気でないことを察したのかもしれない


「ちゅーわけで、本入部確定やな
これ、頼んでたジャージ。

女子用のサイズなんて普段注文せんから時間かかってたらしいわ」

北さんが手渡してくれたのは

稲荷崎排球部の名前が入ったボルドーのジャージ

「改めて、よろしくな」

『はい！』

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