白昼夢Ⅱ (ページ20)

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◾️ ページ20

誰も私を知らないところに、って

一人暮らしを初めて

地元からは2時間位離れてる高校を選んだ

高橋樺子を捨てて、美月として生きるために

「ひとり暮らし？分からないことあったら何でも聞いてな」
「美月ちゃん、これ使い！」
「美月ちゃん、ご飯行かへん？」

見た目が変わっただけで、周りの対応は180度変わった

それが嬉しいのか、悔しいのか、自分でも分からなかった

高校に入学して

可愛い子ってただいるだけでいいんだって分かった

何もしなくてもみんなが声をかけてくれて、手を貸してくれる

昔の私なら見向きもされないような、いわゆる一軍の人達が好意的に接してくれる

「何あれ」

「あー、園芸部やろ。この学年あいつ1人しかおらんらしいで」

土を一生懸命運んでいるのは、確かクラスメイトの…

「姫野、やっけ。あの顔で姫野はほんまやめて欲しいよな笑」

姫野さんは世辞にも可愛いとは言えない

美月「あれ、1人じゃ大変なんじゃ…」

「美月ちゃん優しい！」
「でもあんなん手伝ったら手汚れるで？」

1人で黙々と荷物を運ぶ姿が、自分と重なって胸が痛む

「てゆーか、泥仕事とか美月ちゃんらしくないって笑」

入学してたかが数ヶ月で
一体美月(わたし)の何を知っている気なのか

声をかける勇気が出ないまま目を逸らしたら

「それどこまで運ぶん？」

分け隔てない、優しい声

同じクラスで、人気者の福本大晴君

姫野さんは慌てながら遠慮しているみたいやけど

「大丈夫！女の子1人じゃ大変やろ？」

誰も助けようとなんてしてなかったのに

彼は人のSOSに気付ける人で

「あ！姫野ー！玄関のとこの花変えたんやな。アレめっちゃええやん！なんて花？」

誰とでも打ち解けられて、区別のない

太陽のような人

美月「お、おはよう」

「美月ちゃん、おはよ！」

この人なら、

この人だったら私自身を認めてくれるって
思った

美月「あの、花の植え替え、手伝えること、ある？」

姫「え、気持ちは嬉しいけど手とか服汚れちゃうし…」

美月「軍手、持ってる。ジャージも…。邪魔やったら無理には…」

彼のような人になりたい

私を突き動かすのは、大晴君で

姫「…ええの？ありがとう」

新しく撒いたのは、向日葵の種

姫「正直美月さんとかがこういうのやってるのイメージなかった、」

美月「…お花、好きで」

姫「そっか。手伝ってくれてありがとう」

美月「こちらこそ
咲くの、楽しみやな」

向日葵は目を輝かせる彼にそっくりやから