繋いだ手10

逃げられない ページ38

西島side


真「おいこら、西島。どこ行くねん。
　 ここ座れ。」


思わぬところから與が初恋だってことを、みんなに口滑らせたことがバレてしまい、そ〜っとトイレ行くふりして、部屋を抜け出そうとしたら與に見つかってしまった…。


いつもより少し低い與の声に肩があがり、恐る恐る振り返ると、顎で自分の横を指す。


西「あ、あたし？」


真「お前しかおらんやろ、」


西「……、」


真「はーやーく！」


急かされて、なんとなく正座して近くに座る俺…。


実「なんで正座笑」


真「何か言うことなるんちゃうん、」


西「言うつもりはなかったんだよ？
　 でも2人の事見てたら、なんか、こう、思わ
　 ず、ほんとに思わず口が滑っちゃったんだよ
　 ね、」


テヘ、なんて効果音がつきそうな調子で言ってみるけど。


真「……。」


ぎゅっと眉根を寄せてる與。


周りのみんなに【助けて】と目で訴えてみるものの、誰も何も言ってくれないし、どっちかというと今の状況楽しんでるように見える。


いつも助けてくれるAちゃんでさえ、笑ってるだけ。


聞かなかった事にして！って言ったのに、みんなの裏切り者…。


真「言うてもうたもんはしゃーないから、もうえ
　 えけど、お仕置きやな、」


そう言って、黒い笑みを浮かべた。


西「痛いことはやめてね？」


末「お前何想像してんだよ笑」


すると、與は目の前にあったサラダに手を伸ばした。


真「これ食べたら許したるわ、」


與の手には緑のあいつ、俺の大嫌いなきゅうり。


西「それだけはやだ！」


真「お前子供うまれるんやろ？
　 親になんのに、好き嫌いはあかんやろ、」


日「そうだぞ西島、示しつかねーぞ笑」


真「たったこれだけで許したんねんで？
　 はよ食べろ。」


口元にきゅうりを持ってこられて、ひきつる顔に、トラウマになった時のあの感じを思い出してえずきそうになってると。


與の膝に座ってた輝くんが、すくっと立ち上がり、與の手からパッときゅうりを取った。


輝くんが助けてくれるのか！と思ったのも束の間。


輝「あい！」


にこにこ無邪気な笑顔で差し出される。


末「まさかお前、輝からの受け取れねーとか言わ
　 ねーよな？」


まじかよ、もう逃げらんねーじゃん…。


西「い、頂きまーす…、」


目をぎゅっと瞑って口に入れたものの、襲い来る吐気に、涙目の俺を見て爆笑するみんな。


なんなんだよ！


その後トイレに駆け込んだのは、いつまでもない…。

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