繋いだ手10

大切な場所 ページ23

真司郎side


真「忘れた事なんて1度だってない。
　 寝ても覚めても、ずっとAの事だけ
　 考えて、想ってた。」


あ「ごめんね、変なこと言って…。」


真「Aが悪いわけやない。
　 そう思わせた俺が悪い。」


それだけ言うと、小さく首を横に振る。


真「ここな、俺の大切な場所やねん、」


あ「真司郎の？」


真「何度もここに来て、Aの事想って
てん。」


あ「そうだったんだね、」


LAにきてから何度も何度もここにきては、Aへの想いを募らせていた、大切な場所。


覚えることも多くて忙しい日々やったけど、いつも俺の胸の中にはAがいて。


ふとした時に、笑いかけてくれる笑顔、優しい声、手から伝わるぬくもり、いつも思い出してた。


そんなAの存在が、俺の支えになってたあの頃。


だけど、隣にAがおらんことに、いつまでたっても慣れることはなくて。


どんなに時間がたっても、隣にAがいないのが寂しくて、切なくてしかたなかった。


Aの事を思い出して、どうしようもなくなるとここにきて、好きな想いを募らせた。


同時に、後悔もしてきた。


何で気持ち伝えんかったんやろう、勇気をだして1歩踏み出しとったら、何か変わってたんやないかって。


Aは、どんな気持ちで伝えてくれたんやろうって考えたりもした。


真「ここにきて、Aと過ごした時間
　 いつも思い出しとった。
　 近くを通る恋人同士に、俺達の姿重ねてみた
　 り…。」


あ「青春映画みたいに、私の名前叫んだりし
　 た？」


真「それはない、」


即答すると俺の腕の中でAが【なぁんだ残念】なんて呟く。


さすがに、叫ぶなんてそんな恥ずいことはできんかったけど。


届かんと思いながらも、小さく呟いてたことはあったな、なんて思い出す。


どこまでも続く空を見て、今すぐにAの元へ飛んでいけたら。


好きな想いを伝えられたら。


強く、抱きしめることができたら。


今すぐ会えるなら、会いたいと願った。


そんなあの時の俺の、大切な場所。

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