拾捌ノ弐 ページ41
「……な、んで」
そんな事はない。
自分がこの男のことを邪魔だとか、そういう残酷なことを思ったことはない!
そう否定したかった。
然し、自分が抱いている感情が本当にそういうものでは無いのかと云えば、ハッキリ違うとは云えない。…云えないと思ってしまった。
「中也さんに云われるまで、本当は慎也さんには前線に出て欲しくありませんでした。
あんなにも死に易い所に貴方が立つくらいなら、俺が変わりになってでも守った方が幾らかマシだと思ったから。
…俺は貴方に生きていて欲しいんだ。
時偶、辞めてしまいたいと思うこともあります。不安ばかり目に入って、全部放って逃げ出したいと思ってしまいます。でもね、何故だか離れられない。
それは、慎也さんが可哀想だとかそういうのでなくて、俺の意志なんだ。」
嗚呼、そうか、俺と同じだ。
ただ、此奴は逃げないんだ。
「慎也さん、俺は話をする事が本当に苦手です。
伝えることも、読み取ることも、先ず言葉ってものを操るのがどうにも拙い。
だから俺は慎也さんに甘えて、今まで対話ってものの重要性を素通りしてきたんだ。」
甘ったるい癖に、此方を苦しめる声だった。
どう返せばいいのかさっぱり浮かばない。ただ脳味噌を焼くような言葉が、心臓のあたりに溜まっていって擽ったい。
どうやら幸せらしいことはよく分かった。
其れが似合わない空気でもあったが。
…さっきのこの男の言葉は、嘘ではないのだろう。
然し、完全に真実でもないと思う。
矢張り、如何しても顔が浮かぶから衝動を堪えられるのだ。
悲しむだろう、そう、ほんの少し考えるのだ。
それだけで、「まだ俺はここにいる」と踏み止まれる。
だって如何やったって嫌いにはなれないのだから。
其れが人と生きることだと、俺はついさっき気がついた。
「珈琲を、入れるよ」
「…!慎也、さん」
「こんな時間ではあるけど、淹れる。お蔭様で大分上手くなったんだ。
それから、其れを飲んで俺が話をする。
支離滅裂だろうし、馬鹿馬鹿しいだろう。お前は幻滅するかもしれない。それでも聞いてほしいんだ。許してくれるか?」
話す事は、俺だって苦手だ。
でも云わなくてはならない。
俺と鷹喜は、何ら変わらないのだということを。
彼と、自分の先の為に。
少々涙を堪えているらしい鷹喜から視線を外して、手持ち無沙汰に窓の外を見る。
澄み切った空にスウっと月が浮かんでいて、其れが随分明るく見えたのだった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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空豆火月(そら豆)(プロフ) - エミリーさん» wやっとこさやわwこれからも亀更新やわ。 (2020年3月23日 11時) (レス) id: 5da4921e9f (このIDを非表示/違反報告)
エミリー(プロフ) - 千風やで!!! うれし!!! 更新超待ってた!!!!! (2020年3月23日 11時) (レス) id: 9a38a6fda6 (このIDを非表示/違反報告)
そら豆(プロフ) - 千風さん» 夢主はガチストォカァだからね。誰もさして突っ込まないけど。諦めてるけど。 (2019年1月26日 14時) (レス) id: a1dcc5c8f0 (このIDを非表示/違反報告)
千風(プロフ) - シリアスクラッシャー降臨やな。たくさんの中也さんてww (2019年1月25日 20時) (レス) id: d4838ee308 (このIDを非表示/違反報告)
そら豆(プロフ) - 千風さん» ふふふふふふ。愛は隠さないって云うのがモットーなんです!by夢主 (2018年6月1日 7時) (レス) id: a1dcc5c8f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空豆火月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時:2018年3月5日 18時