美彩は知っている

レンアイモノ。 ページ25

彩「は！？」





私が小説家デビューして何ヵ月か経った頃。





デビュー作の話がバカ売れして、瞬く間に売れっ子になった私。








彩「レン、アイモノ？」




坂本さんに誘われてディナー中。






坂「そ。なんやかんや言って、恋愛モノが一番人気なのよ。」




うん…中学生の頃、悠飛に似たようなことを言われた。



でも、ねぇ……





坂「なぁに、その“レンアイって美味しいの？”みたいな顔は！」







グビリ、と生ビールを口に注ぐ坂本さん。



私はお酒弱いから、烏龍茶。





坂「大人なんだから、恋愛経験あるでしょ。失恋の一つや二つ…ネタになるような…」





そういう坂本さんはきっと、恋愛経験が豊富なんだろうなぁ。






えっと、砂原との恋はkzに書く予定だし、翼とのは…片想いだからあんまネタにならないし。








坂「まぁ、深く考えずに書いてみてよ。友達の話でも良いからさ。」








そう締め括ったトコロで、別れた。







恋愛経験が豊富そうなのは、黒木君だけど教えてくれなさそう。







あ〜もうっ！




誰に聞けば良いのよっ！


…とりあえず、担当の翼に連絡。



翼「どしたの、珍しいね。ソッチからかけてくるなんてさ。」




私は坂本さんに言われた事を話した。





自分が困ってることも。



翼「人の話でも良いと思うけどさ、やっぱ恋愛は、自分が経験した方が良いと思うよ。」



彩「だ、か、ら、困ってるの。」



そっか、って呟いた翼は黙りこくってしまった。


なぁに、この空白の時間は！





しばらくすると翼はあっ！っと声を上げた。





翼「じゃあさ、俺と付き合わない？」


彩「え。」


翼「マジじゃないからね。恋人っぽい事すればネタ、思いつくんじゃない？」









彩「……………ん。」








好きだった人と、こんな関係になるなんて思っていませんでした。




マジじゃないからね。



その言葉で傷ついたのは、どうしてでしょうか。






思春期では感じることの無かった、複雑な感情が芽生えてきた。


この自分の気持ちを言葉でどう表せば良いか、分からない。




一応、小説家なんだけどな。








大人の恋………不思議な響き。


あ、違った。









翼はマジじゃないんだった。




でもたぶん…私はマジ、だ。








小説的には良いんじゃない？


こんな設定。




だけど、現実はどうなんだろう。






ただただ苦しいだけな気がする。

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