沖田総悟と病室101

10日目 ページ10

九石榴家具。大手家具メーカーでもあり、庶民からも金持ちからも愛されている。
奇想天外な家具を作ることは勿論、その質は世界最高峰とも言え、彼らは自ら良質な木を育てることから始めている。
天人が町に攻めてきた時、初代代表取締役が考案したシェルターになる椅子は多くの良家の人間を救った。その結果、株式会社として大成功、今に至るということだ。
だが、今は黒い噂も絶えない。
武器商人に彼らの技術が流れ、攘夷志士に加担しているとか、外国の戦争を支援しているとか、宇宙海賊春雨と繫がりがあるとか。
調査記録を見て、総悟はふーんと興味なさげに溜息を吐いた。興味ない素振り、だろうが。
Aはその家の第一子、長女らしい。二歳下に弟の護清十郎なる人物がいる。
「今、後継者としては護清十郎を上げる声が多いようですけど、Aさんが優秀なために無下にはできないらしいですね」
山崎が座って書類を並べている。
「…」

「近藤さん、もうストーカーしないでほしいんだけど」
「ストーカーじゃねえ！妖精だっつってんだろ！！」
「ゴリラは妖精じゃねえよ」
「誰がゴリラだ！！！」
近藤が執着…失礼、恋慕する相手のお妙にカボチャで殴られ、そこには湿布が貼られていた。今日は山崎に用事があったのだが、どうも総悟に会いに来ているらしい。そう何度も彼に会いたいわけではないので、ここで待っていた。
「こんにちは」
後ろから声が掛かる。眩い白の髪と、血が溜まったような赤い目が覗き込んでいた。右瞼は縫合の跡があり、他にも腕にひびのように傷跡があった。
「あんだぁ、お前」
「お嬢さん。誰か待ってるのかな？」
「総悟の、お友達でしょう？時々入院してる…」
土方が思い切り顔を顰める。
「誰があんなドS帝王三世みたいなやつと友達にッ…て、お前、あいつの知り合いか？」
「うん。入院してる間だけ。ねえ、総悟は真選組なんでしょう？どこに所属しているの？とっても強いのかな？」
「はいはい、お兄さんたちは忙しいから、別んとこ行きなさい」
「お髭のおじさん、それ隊服？とってもかっこいいね。似合うよ。まるでおじさんに着られるために作られたみたい」
「へへへへへへなぁに？なんでも聞いてちょーだいねぇ！」
「近藤さん…」
どことなく、雰囲気がミツバに似ているが、妙に狡猾そうでなるべく触りたくない。
彼女は目を細めて、人懐っこい笑みを浮かべた。計算されたように、完璧な笑顔だ。
「総悟って、どんな子なの？教えてほしいな」

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