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6日目 ページ6

「A、もう外には出ていないだろうな」
でっぷり太った肉の塊。父親を表すならそれ以上も以下もない。
「全く、お前ときたら、裸足で雪原を駆け回るなど、品位を疑うぞ」
「許してくださいましお父様。私だって外に出て遊びたいのです」
「全く…」
例え肉親であっても、彼女の浮世離れした美しさには勝てない。天使が化けているのだと言っても問題ないくらい、彼女は、神秘的すぎる。
「検査はどうだった」
「異常ありませんわ。包帯ももうすぐ取れると」
「…そうか。それはそうと、縁談が来ていてな。お前も恋をする年ごろだろう、この中から一人選ぶと良い」
父親はそう言うと、お付きの人が持っていた風呂敷から何枚かの写真を取り出した。皆一様に左45度に体を傾けており、埃も皺も無い一張羅を着ていた。
「皆様お前に会いたいと仰っていてな。どうだ、二枚目ばかりだろう」
「…松岡カンパニーのご子息に、光丸海運の次期社長、それにオオエド屋のご子息、ですか」
「!」
「お父様、皆様と関係をお持ちになりたがってましたものね」
足を組んでAは目を細め、挑発的に笑う。その艶なる目は、女慣れしていてもどぎまぎさせる。全てを見透かすような目。
「今は恋愛に現を抜かすほど余裕もありませんの。自分の健康を作るために生きているも同義ですから」
「…」
Aは写真をゴミ箱に入れて、それから枕の下に置いてあった書類を差し出した。
「こちら、新商品の案です。よかったら目を通してください」
父親は憎らし気に彼女を見ていたが、その書類をひったくって、さっさと出て行った。お付きの黒服を一礼し、彼女はそれに手を振り返す。誰もいなくなった病室で、弟に似た父親を侮蔑する。
全く愚かしい。考えが及ばないとでも思っていたのか。邪魔者扱いするにしても、もう少し頭を使えばいい。しかし、今回の新商品は自分でもなかなかに気に入っている。なんせ物理の法則を利用し目の錯覚を引き起こす、座っているだけで不安になる椅子と、コーヒーの一杯も置けないような机だ。
無論使える。だが、そのトリッキーさこそ、今の顧客が求めている…。
「なんて、会ったこともないのに。あー、つまんない」
窓を開ける。
白銀が敷き詰められていて、今にも雪が降りそうだ。
こんなに冷えて、寒い日にしか外に出られない。
Aは窓から足を出し、ザクとその雪を踏んだ。痛みはない。
彼女が痛みを感じたのは、3階から身を投げて全身骨折した時だけだ。

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ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください!応援しております! (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2021年7月22日 23時

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