5時間前 ページ45
護清十郎がびしっと手を上げた。思春期真っ只中の少年らしい素直さがある。
「お、俺は真選組行きたいです！…です…」
彼はだんだん顔を赤くしていき、小声になる。
「近藤さんと、一緒に、俺も酒飲みたいです…」
「がっはっはっは！いいじゃねぇか。真選組はいつでも誰でも歓迎だ！！」
近藤が護清十郎の背中をバシバシ叩く。しかし体幹が良い彼はブレない。
「ありがとうございます！い、一応、柔術は初段で剣道は三段で、カポエラーもやってました！！」
「ぅわすごぃ」
「こりゃ後継ぎ向いてねぇや」
「でしょ？もともとそんな器でもないんだ、この愚弟は」
新選組御用達の救急車が集まってきた。消防車もきた。救急隊員が一人、近藤のところに走って来て、何か会話を交わしてから、近藤は自分の肩を優しく片手で抱いた。彼の太く大きな腕は木に生えていてもおかしくなさそうだ。
「とりあえず、Aさんは病院に行って、治療してもらいなさい。傷跡が残ってはいけないしな」
「待ってくだせぇ近藤さん」
総悟が近藤の服の裾を掴んだ。それから言い難そうに、あーとかうーとか唸って、Aを指さした。
「それ、ちょっと借りていいですかい」
「え？なんで？」
「近藤さん」
土方が今度は肩をぽんと叩いた。
「総悟、…頑張れよ」
「いや頑張ることは何もねーんですけど土方死ね」
「赤飯炊いて待ってるぜ」
「てめーをお焚き上げしてやりまさぁ死ね」
「今は何言われてもムカつかねぇなーぁ、万事屋よ？」
「え？十四郎君どうしちゃったの？とうとう脳みそまでマヨになっちゃった？」
「あーあーあ、ムカつかねームカつかねー」
意味が分からない万事屋三人は顔を見合わせ、Aを見た。彼女は何か分かっているらしく、嬉しそうに笑って、総悟の手に飛びついた。
「ねえ、総悟」
「あ？」
「どうせならみんなで行こう」
「なんで」
「私の新しい門出だよ。それに相応しく派手にいきたい」
「…はあ、まあ、俺ぁ車運転できねーし。車で仮眠して…」
「とりあえずあばらが本当に痛いからそこだけ治療してもらうかなぁ」
Aは救急隊員の方に行き、折れたあばらを手当てしてもらいにいった。あっと言う間に駆け出され、引き留めることもできない。
かのじょの足取りは怪我人のそれではないが、ヒビくらいは入ってるかもしれない。あれだけ傷を受けているのだから。
「それで、沖田さん。どこに行くんですか？」
「…海」
「海？」
「初日の出を、見せるって。約束しちまったからなぁ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます！ (2021年11月11日 12時) (
レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください！応援しております！ (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ソーサラー | 作成日時：2021年7月22日 23時
