27日目 ページ27
もともとは、ちょっとした財政難に陥ったのがきっかけだった。ちょいと宇宙人に技術を流せばあっと言う間に金になった。それ以来非合法的な取引を続けている。金の代わりに流れ着いた武器を攘夷志士に流してみたがこれも金になった。
家具以外にも内装を手掛けてみれば、新しい商売に着手できた。というのも、攘夷志士の隠れ家としての家を作ることだった。Aは家具の設計にしか興味がないらしい。護清十郎にはそのハウトゥーも叩きこんでいた。
まだ幼く正義漢の残る彼には聊か荷が重いらしく、嫌そうに顔を顰めたり、取引先について行っても黙ってどこかを見つめているだけだった。それについては大丈夫。いずれ染まる。
食事中、護清十郎の方を見ると、いつものように礼儀正しく、不器用に食事をしていた。
「護清十郎や」
「はい、父上」
顔を上げて、彼はカトラリーを置く。漸く身についた最低限のマナーだ。しかし、あの娘に比べてなお可愛く、後継ぎにしたいほどだった。
にこりと笑って「期待しているぞ」と言うと、彼は固く照れたように笑って、「はい」と返事をするだけで、それ以上のことを言わなかった。
やはり男だ。男でなければならない。婿養子たる自分も同じことで、妻ではここまで会社を動かせなかっただろう。
ブランド品に身を包み、意味のないお料理教室に通い続ける彼女については愛しているとただ一言だけ。愛人の方が麗しいと思うし、Aの方が自慢できるとも言える。ヨガも琴もどうでもいいのだ
。格別美しいわけでもない、ヒステリック持ちの女だから。
一口大に切った肉を食べる。
「あの、父上」
「ん？」
ガタイが良くてまだ幼い少年が、不安げにこちらを見つめている。その面影がどうもAに似ていた。憎たらしい愛娘。
「…姉上は、やはり風介様とご結婚なさるのでしょうか」
「まあ、その方があいつにとっても幸せだろう。あの体のままでは碌に女としての幸せも満足に得られまい」
「僕は…風介様が、少し苦手です。その、ちょっと怖くて」
「いつまでも人見知りをするのはお前のいけないところだ。警戒なんてしなくていい」
「そう、です、ね」
護清十郎はまだ何か言いたげだったが、彼は目線を落とし、下手糞に笑って見せた。その笑みが愛想笑いとしか分からないような、何の感情も告げない笑みだ。
取り繕った笑みでも笑みは笑みだ。
二人きりの食事はもう恒例だった。母は、部屋でいつも誰かと電話しているので食事の場にはでてこない。
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ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます！ (2021年11月11日 12時) (
レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください！応援しております！ (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソーサラー | 作成日時：2021年7月22日 23時
