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20日目 ページ20

姉の体調が崩れているのは何となくわかっていた。もともと強い体の持ち主ではないし、体力も多くない。数日、連れ回した男は平謝りをしてまた会える日を楽しみにしていますと宣った。
父も母も彼女に「ゆっくりなさい」と一言だけ告げて病室を後にした。医者の所に行くのだろう。
残された空間で、死人のように白くなった姉を見下ろしていた。いつものように軽口を叩くことも無く、時折魘され、眠っている。彼女の傷跡はもうほとんど消えている。
「よお」
扉を開けて入ってきたのは、足を若干引き摺って左腕にギプスを嵌めた男だった。
「どうも…?」
「あー、やっぱり体調崩してやがる。顔色良くなかったもんなぁ」
男は椅子を引っ張って来て座った。甘い顔をしているが、目つきは良くない。
「Aの弟ですかい」
「はぁ」
「ふーん…」
「…あの、どちら様で」
「お巡りさん」
その一言に体がびくっと跳ねる。警察?何故?いや、今はただの一般人と変わらない。そう思って気持ちを落ち着かせていると、彼は懐から一枚の写真を取り出した。
「これ、アンタだろ」
そこには確かに自分が映っている。先日父ととある宇宙海賊の取引に同行した時の写真だった。取り上げようと腕を伸ばすが軽々と避けられる。
「ちょっくら話を聞かせてくれりゃ、何もしねぇよ。これは取引だ」
「ッ…そんなの、信用できるわけがない」
「へえ、じゃあアンタは自分を守ろうとしてくれてる姉の気持ちも踏みにじるわけだ」
「は!?姉さんが!?馬鹿言うな、この人がそんなことするわけないだろう!第一、俺のことなんか嫌いだし…俺も、この人なんか嫌いだ」
弟が俯いた時の表情はまだ幼く、世間を知らないはなたれ小僧に見える。いや、それに違いないのだろう。
「3日だ」
警察の彼は指を三本立ててこちらを真っ直ぐ見た。
「3日以内に決めろ。それ以上は待たねぇぞアオガキ」

夜中、病院の中を這いまわる人影があった。それはふらつき、壁に手をつき、時に転んで、それでもどこかへ向かっていた。
到着したのは公衆電話ゾーンだった。沖田に貰った電話番号を片手にダイヤルで入力する。
電話が鳴る。お願い、出てと祈りながら待つ。
『ふぁいもしもし〜、何アルかぁ』
「…明日のお昼、かぶき町中央病院の待合室で待っています。白い花を持っていますから。来てください」
『…んぐごごごごごおおおおおお』
電話を切る。駄目なら明日またかければいい。そう、明日。
Aはそのまま崩れ落ち、意識を失った。

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ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください!応援しております! (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2021年7月22日 23時

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