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14日目 ページ14

「っていう話をしたんだけど〜」
「病院でする話じゃねぇな。帰れ」
「やなこった」
総悟と一緒に中庭へ出る。寒さのあまり外に出る人間は少なく、そして雪の白一色に染まったその光景は余りにもつまらなく、変わり映えのない場所だった。
ザクザクと音を立てて、彼女の足跡がつく。自分の後ろには、やや不格好で、引きずるような足跡があった。
「知っておきたいじゃない。どうせいつかしなきゃいけないんだから」
諦念か、それとも絶望か。AはAの人生について知っている。女としてではない、ただの道具として使われるだけの未来。これまでも、これからも、彼女に自由はない。
「どんなもの好きが、私を買うかな。こんな醜い体、鑑賞以外にしないでほしい」
「逃げたきゃ逃げればいいじゃねぇか」
「どこに?」
「そりゃあ自分で考えな」
「酷いな、助けてくれてもいいのに」
「やだね」
彼女の髪は雪の白とはまた違う色だ。少し灰色が掛かったような、金髪のような、こうして見ると彼女はまるで雪とは思えない。雪ではないのだ、当然だが。その見目から連想した純白は彼女に似合わない。
ミツバは美しい女性だった。夏には向日葵が、秋には金木犀が似合うような、常に散る恐怖に怯えるほどに儚く、それでいて誰よりも優しい手をしていた。総ちゃんと呼ぶ声は今も覚えている。比べて彼女は冬そのものが似合う。夏に彼女を外に出せばアイスクリームのように溶けてしまわないだろうか。ああ、アイスクリーム、いいな、似てる。ぴったりじゃないか。
「アイス食いてぇな。ちょっと買って来いよお前の金で」
「えぇ?急だなぁ。いいね、中に入ろう」
「あ?なんで?」
「寒くない?」
「寒いからいいんだろうが。はやくしろよ」
「もー、でも私食べたことないよ。どれがいいとか分からないんだけど」
「は??????マ??????」
「総悟も行こう、それから、外で食べればいい」
総悟の手を引いて、彼女は病院内へ引っ張り込もうとする。案外俗物に疎いのだろうか、いやお菓子は食べていたはずだが。好奇心がありそうな彼女なら、勝手に食べていそうなのに。
ふと彼女の手が異常に冷たい事に気づいた。外に薄着で出ているからだろう。
そうか。
寒さが平気としても、寒さが好きとは限らないか。


「トシ見てぇ…総悟がデートしてるぅ…うっ、うっ…」
「泣くなよ近藤さん。局長なんだからどんと構えておけよ。バージンロードはあんたに任せるから」
「お前が一番舞い上がってない?」

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ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください!応援しております! (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2021年7月22日 23時

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