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2日目 ページ2

始末書を書くしかやることが無い。こんな怪我をしてしまったせいで鍛錬もままならない。
総悟は退屈そうに筆を走らせ、止めて、外を見て、また筆を走らせ、そのサイクルを何分か繰り返し、いよいよ窓ばかり見るようになった。
今日は雪が降っている。こんな日は土方の野郎に水を掛けるに限る。あの男も唇真っ青になって、そしてぶるぶる情けなく震えるのだから。ああ、暇だ。こんなに暇なのは、本当に暇だ。
「あ」
あの少女だ。彼女は裸足のまま雪に足跡をつけている。指先が真っ赤になっており、そして、やはり彼女は遠くから見ると頭が雪に馴染んで首無しに見える。
少女がこちらを向いた。緊張した面持ちで、近づいてくる。真っすぐ、あの赤い目で自分を捕らえて、こちらに。
こら!
彼女を叱責する声が聞こえた。彼女はそちらを向いて、微笑んでいる。何かしゃべっているが、ここからでは確認できない。太く威厳のある男が走って来て、彼女の手を引っ張っていった。その腕は細く、やはり包帯があったが、異様なまでに白い。
去り際に上品に笑って手を振っていった。
「…ふん」
総悟はまた始末書を書き始めた。ところが、また窓の外を望むようになって、三行も進まなかった。
それが朝の出来事だった。

昼食を終えて、総悟はひと眠りでもしてやろうかと思って、アイマスクをつけていた。しかし眠れない。そりゃ、サボりでもないのに昼寝なんて楽しいわけがない。
適当な始末書を作るか、窓の外を見ている方がいいだろう。そう思ってアイマスクを外した。
直後、ノックが響き、扉を開けたその先、視界に入ったのはあの少女だった。
「こんにちは」
総悟は顔を顰め、彼女を観察する。敵には見えない。
「何の用でぃ。人様の病室にずかずかと」
「君、またいるの」
話を聞かず、彼女は首を傾げ、総悟を覗き込む。不思議な雰囲気の少女だ。大人のような子供のような、無邪気なような達観しているような、異世界から来たような少女だった。
「誰ですかい、あんた」
自分を知っているような口ぶりの彼女に、総悟は目をぱちくりさせた。
彼女は微笑んで、「A」と短く答えた。
「君はよくここにいる。怪我ができる元気な体なんだね」
その儚げな異質さに、見覚えがあった。
「年が近そうな君はよく覚えている。ねえ、友達になって?雪兎だけじゃ寂しくて」
ああそうだ、この、嫌に大人びて、ふっと消えてしまいそうな出で立ちは。
「…総悟でさぁ」
姉に似てなきゃ、偽名を教えてやるところだ。

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ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください!応援しております! (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2021年7月22日 23時

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