キミとのキセキ

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無意識か、ひろが服を掴む手に微かに力が入った気がする

前に立つ二階堂が探り当てたスイッチを押した事で真っ暗だった玄関と廊下に一気に明かりが広がった

…そう言えば、北山の家に来たのなんて何年ぶりだろう

曖昧で朧気な遠い昔の記憶

恐らく、来た事があるのは此処ではなく以前住んでた別の家だろうけど




「…とりあえず、どうする？」




少し先に居た二階堂が振り返る




「ひろに自分で家の中見て貰おう。俺達が勝手にあれこれ触るのもね」

「確かに、」




何が起きてるのかサッパリといった顔の小さい彼をそっと降ろした

そのまましゃがみ込み、目線の高さを出来る限り近付ける




「…ひろ。このお家の中ちょっと探検してみようか？散らかすのは駄目だけど、好きな所好きな様に見たり触ったりしても良いよ」

「たんけん？」

「そ、探検。何か気になる物あったら教えてね。お宝あるかな」




自分の言葉におそらく遊んでもいいのだと理解すると同時、

パァッと表情を明るくさせ「たんけんする！」と意気込んでトタトタ走り出した




「あ、ミツ待って！そっちまだ電気点けてないよ！」




二階堂が慌てて後を追い、部屋の電気を点けていく

きっとこの廊下の先はリビングやキッチンなのだろう

早速あちこち覗いて"お宝探し"をしてるのか、キャッキャ楽しそうな声が響いてきた

思わず緩む口元

「転ばない様にねー！」「あんま走り回ると危ないよ」と、

すっかり保護者の顔で見守る二階堂の声を聞きながら自分もゆっくり部屋の中に入る




「ニカ、どう？」

「…何か、今んとこ単純に遊んでるだけ。て感じかな」

「そっか、」




そのまま隣に並び暫し遊び回るひろの様子を見守った



本来の自宅

例え大人としての記憶が無くとも、此処に来れば何か変わるかもと僅かに抱いてた期待は呆気なく崩れてしまいそうだった

今の彼にとっては初めて来る、物珍しい新しい場所でしかないのかもしれない

今日もしこのまま特に収穫も無かった場合、

次はどうしたものかと思考を巡らせていると隣で二階堂が突然「あ、」と声を上げる




「どうした？」

「ガヤ！あれ見て！」



そう言われ、徐に指差す先に目線を移す

あんなに燥いでたひろが急に大人しくなり、ソファに置かれた鞄をジッと見つめていた

そっ、と中を覗いて何かを手にしている




「ひろ、何か見つかった？」




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