3品目「ホワイトデーとマフィン」 ページ3
朝1からの番組収録。
まだ集合時間にはかなり余裕があるが、控え室の扉を開けるとそこにはもうすでに先客の姿があった。
「太輔」
背後からそう声をかけると、読んでいた本から視線を上げてこちらを向いた。
「おはよ、渉」
こちらに向けられたいつも通りの明るい笑顔と声色。でも、やはりどこか少し疲れが混じっているような気がする。
それもそのはず、今藤ヶ谷は春から始まるドラマに、映画の撮影準備にと大忙しのはずだ。
「ごめんね、本読んでたのにお邪魔しちゃった」
「ううん、ちょうどきり良かったとこ。現場被るの久々だな、わたの顔忘れちゃうところだったわ」
「ひでーな……親友の顔忘れられるとか困る、毎日自撮りして送ろっか。」
「いらねーよw」
ケタケタ笑う様子を見て少しほっとする。
「今大変だろうけど、ちゃんとご飯も食べてね」
「もー、相変わらず心配性だな〜」
「はいこれ、ホワイトデー」
……というのは、色々なものを押し付けるための名目上の理由で。ただのお節介だ。
紙袋を押し付けられた藤ヶ谷はキョトンと目を丸くした。気を許したやつくらいにしか見せない、子供っぽくてなんとも可愛いらしい表情だ。
「ホワイトデー?あっこれ!こないだ俺がお取り寄せで気になってるって言ってたやつ〜これは雑誌?俺の好きな作家さんが寄稿してる!知らなかった!ありがとう〜〜〜あと……」
そう言って袋から出したのは、透明な袋に入れて丁寧にピンク色のリボンでラッピングしたマフィンだ。
透明なフィルム越しでもわかるほどに、藤ヶ谷の表情がパァーっと明るくなる。
「それは俺が焼いたやつ。ラズベリーとホワイトチョコの。乾燥剤入れてあるけど、それだけは早めに食べてね。」
「……結婚しよ渉……今から食べていい?朝なんも食ってない」
「はいはい、ほんとはちょっとチンしても美味しいんどけどね。あったかいコーヒー買ってこよっか。」
「お願いする……」
お芝居してるときのキリッとした顔も、ファンを虜にする色めいた表情も、どれもとても魅力的だけれど。
「うま〜!!」
「それは良かった。」
やっぱり甘いもの頬張ってるときの幸せそうな太輔の顔が1番好きかな、と思いながらその向かい側に座って俺も熱いコーヒーを啜った。
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エマール(プロフ) - ユキさん» ユキさんはじめまして。いつもお読みいただきありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!ゆっくり更新で申し訳ありませんが、これからもよろしくお願い致します(*'▽'*) (2021年6月9日 22時) (レス) id: 930eedf6c5 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - はじめまして。いつも読んだ後にふふふ…って思わず微笑んでしまうのでどのお話も大好きで、定期的に読み返させていただいています。番外編も読んでほっこりでした(^ ^) (2021年5月29日 16時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - あ、誤字失礼しました…汗 (2021年3月30日 12時) (レス) id: d0578835d1 (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - エマールさん、お返事ありがとうございます、嬉しいです♪はい、ぜひご自身のペースで無理なく更新なさってください!楽しみにお待ちしておりますので(^^)赤担なので、お腹すかせてるみっくんも可愛いさは、スパダリ横尾さんもカッコ良くて、最高です!! (2021年3月30日 12時) (レス) id: d0578835d1 (このIDを非表示/違反報告)
エマール(プロフ) - なななさん» なななさん初めまして。ご感想、およびいつもお読みいただきありがとうございます!横尾さんのスパダリ感本当にたまりませんよね…ゆっくりペースの更新ですが、これからもよろしくお願い致します。 (2021年3月28日 21時) (レス) id: 930eedf6c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エマール | 作成日時:2021年2月25日 4時