悪役.09 ページ10
「……おい、なんだあれ…」
轟は初めて目の前で見るAの個性に目を見開いたのだった。Aは爆破を使い自由に飛び回っては、敵を爆弾化させ跡形もなくしてしまったのだ。
轟はその殺傷力を誇る個性に圧倒され、思わず一歩後ろへと下がった。
「…………全然違うじゃねえか」
そしてテレビで見るAはあくまでプロヒーローとしてのAであり、今目の前にいるAは
人々を笑顔で助けるAの姿はそこにはなかった。
________________見つけた、
「っ！！」
突如Aが背後に現れたのだった。
轟は咄嗟に振り向き、間合いを取ろうとするもそれよりも早くAの手が轟の身体に近づく。
あまりの殺気にヒュッと喉が鳴る。
『____________て、あれ轟？』
そして触れる寸前でピタリと止まったのだった。
Aはキョトンとする。
『ごめんごめん、敵だと思ったの』
「………ああ」
『あれ、轟も敵倒してくれたのね』
二人の背後には氷漬けにされている敵が複数人いる。
Aは『凄いじゃん』と言っては氷に触れた。
轟はそんなAを静かに見る。
『他の生徒たちは見てない？』
「俺しかいませんでした」
『そっか、じゃあ早く探さないとね』
二人は走り出す。
Aを横目で見ながら轟は口を開いた。
「……テレビで見てた感じとだいぶ違いますね」
『やっぱり見ちゃってたかあ』
Aは『あちゃー』とわざとらしく額に手を当てる。
『私は敵からだけでなく、心も救うのがヒーロだと思ってるんだよね』
「……だから、個性を抑えているんですか」
『ヒーローが目の前で敵を爆破させてたら怖いでしょ？
私の個性なら尚更、ね？
だから生徒にも見せなくなかったんだけどなあ』
少し困ったように笑うAを今度は真っ直ぐ見つめた。
「俺は爆弾魔を怖いとは思いません、何度も助ける姿を見て見てきましたし」
『！』
「それは他も同じだと思います」
人々のために力を抑え、苦悩しているAに轟は心動かされたのだった。
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作者名：ゆき | 作成日時：2023年3月13日 23時
