504 ページ4
廊下で二宮と待つ智にも処置室の声が聞こえていて、智も笑ってしまっていた。
「ありがとう、松潤。雅紀、苦しかったこと覚えてないんだ」
「多分ね。それで、詳しい説明は後で翔さんからあると思うけど、やっぱり酸素が組織まで届いてなかったせいで、数値が下がってた。高濃度酸素で今は保ってるよ。中に入って？」
手を消毒して、智は中に入った。
「んふふっ。まーちゃん、翔くんの抱っこいいねえ。翔くん、翔くんって。ね？まーちゃん」
部屋に入るなり、智はそう言って雅紀に笑いかけながら雅紀の手を動かして櫻井をペタペタ触らせた。
すると雅紀はにこーっと思いっきり笑顔を見せた。
「嬉しいね、まーちゃん。翔くんの抱っこ、嬉しいねー」
その雅紀を抱く櫻井はというと、雅紀の可愛さに崩壊寸前。
「嬉しいの、まちゃき。翔ちゃんのこと大好きだもんね〜」
思いっきり櫻井が顔をくっつけると、雅紀は嫌がるそぶりを見せた。
その顔がなんとも面白くて智は大爆笑。
「ははは！まーちゃん、そんな顔しないの」
でも、この雅紀の反応に櫻井が驚いて顔を上げると松本もまた櫻井を見ていた。
雅紀の脳が少し回復してる…
思ったことは2人とも同じだったようで互いに見つめ合ったまま笑顔で頷いた。
部屋に戻った二宮の様子を確認しようと松本がクリニックを抜けて部屋の方へ向かうと二宮がリビングをうろうろしていた。
辺りを見回してきょろきよろしている。
「ニノ」
松本が声を掛けると二宮はすぐに顔を上げた。
「ここどこ？」
二宮の顔は不安でいっぱいだった。
「うん？翔さんの家だよ。俺とニノは翔さんちに部屋を借りてるんだ」
努めて冷静に松本は二宮に言ったが、二宮の返事は愕然とするものだった。
「部屋？部屋ってなに？ここは僕の家じゃないから家に帰る」
二宮の表情は真剣でふざけているようには見えない。
「今日は潤くんたちと野球やろうって話してるの。だから帰らなきゃ」
帰る？どこに帰るつもりなんだろう？
「どこに帰るの？」
「どこって。家に決まってるじゃん」
二宮が指差した方向は、二宮の実家があった方向。
だが、二宮の実家は住む人が居なくなって二宮自身が解体を決めてもう残ってはいなかった。
過去と現在の区別がつかない症状が現れていた。
こういう時はどうするんだっけ……
いつも患者の家族に対応の仕方を伝えているのに、突然の症状に松本は固まってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 275人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蛍(プロフ) - 初めまして。こちらに出会って数日かけてじっくり読ませていただきました。一緒になって、頑張れ！って応援したりハラハラしたり、笑顔になったり。最近は更新されていないようですがまた時間のある時に続きが読めたらうれしいです。ありがとうございました。 (2022年1月18日 16時) (
レス) @page8 id: 1a848003a8 (このIDを非表示/違反報告)
あのひ(プロフ) - 雅紀くんも、にのも、小さなことでもできた！役に立てた！って感じながら過ごせそうですね。この仲間たちと一緒にいれば…。一方的ではなく、お互い支え合っているあたたかい関係が大好きです。ボードの方にメッセージ送っていますので読んでくださいね！ (2021年10月25日 20時) (レス) @page8 id: 2bf0d880c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いずみ | 作成日時：2021年10月10日 23時
