1 ページ1
「お大事になさってください」
患者が途切れたタイミングで診察室を離れて、休憩を取り始めた櫻井の元に看護師が来た。
「先生、雅紀くんが来てます」
「雅紀が？」
「はい。腹痛を訴えています」
携帯を見るが着信はない。
急いで診察室に戻る。
「雅紀〜、いいよ〜」
診察室に入ってきた雅紀は、少し顔色が悪くて、お腹を押さえていた。
「翔ちゃん…突然ごめんね……」
「全然いいよ。座ってるの辛くないか？」
「うん、大丈夫……」
体調不良を隠したがる雅紀が座れる程度の腹痛で病院に来るのは珍しいなと櫻井は思った。
「どんなふうに痛い？」
「……えっとね……キリキリする感じ……」
なんだか歯切れの悪い返事。
「ベッドに横になろっか」
疑問に感じながら、ベッドで触診をすると、少し胃の動きが早い程度で強い腹痛は無さそうだった。
だが櫻井が触診をしている間、雅紀はやたらと看護師の動きを気にしていた。
何か看護師に聞かれたくないことでもあるのかもしれない…
「ごめん、ちょっと2人だけにしてもらえる？」
櫻井は看護師を診察室から退室させた。
「胃の動きは少し早い程度だよ。そんなに痛い？」
「……………ごめん………お腹も少し痛いんだけどね…………歯が痛いんだ……痛み止めくれない？…」
雅紀は今にも泣き出しそうな声で言った。
「歯が痛い？！歯医者さんは？行ってないの？」
「行ったよ！何軒も行った。でも、治療してもらえなくて…助けて、翔ちゃん。痛くて昨日からゼリーしか食べれてないんだ…」
治療してもらえない？！
なぜ？！どうして！？
腹痛の原因は恐らく立て続けにゼリーを食べたことだろう…
「……っ……お腹痛くなってきた…」
「トイレ行くか？」
「うん……ごめん…」
お腹を押さえて立ち上がった雅紀を支えてトイレに連れて行く。
途中で看護師が渡してくれた湯たんぽを雅紀に持たせた。
診察室で雅紀が戻ってくるのを待つが、色々と気になることが多すぎて落ち着かない。
−お大事に
松本の診察室から患者が出て行く音が聞こえた。
「潤、ちょっといいか？」
雅紀の話をすると、松本も眉をひそめた。
トイレから出てきた雅紀は湯たんぽを持っているにもかかわらず、唇も爪の色も紫色。
「大丈夫？」
「ちょっとだけ冷えちゃった…」
急いでいつもの部屋に連れて行き、電気毛布を敷いたベッドに寝かせた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蛍(プロフ) - 今頃読みました！更新ありがとうございます！うれしい！元気なまーくん、ニノも元気にお医者さんしてる…嬉しくて一気に読んじゃいました。本編はまたゆっくり、いつまでも待ってます！ (2022年5月30日 19時) (
レス) @page29 id: 1a848003a8 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - あのひさん» そう言って頂けてとても嬉しいです。そうですね！翔ちゃんとたくさん話が弾んだかなと思います！気まぐれにまた番外編を載せるかと思いますので、その時はよろしくお願いします。 (2022年4月20日 22時) (レス) id: d2293ee81b (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - *ｈａｎａ*さん» こちらこそ、コメントありがとうございます！また優しいお言葉嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2022年4月20日 22時) (レス) id: d2293ee81b (このIDを非表示/違反報告)
あのひ(プロフ) - 久しぶりに仲間たちに会えて、とっても嬉しいです！番外編、得した気分です♪翔ちゃんとの帰り道も楽しそうですね。 (2022年4月19日 21時) (レス) @page29 id: 2bf0d880c6 (このIDを非表示/違反報告)
*ｈａｎａ*(プロフ) - なんて素敵なお話、読ませて頂き本当にありがとうございます！ 幸せそうな雅紀くんに、こちらまで最高に幸せな時間を堪能できました。本編のほうは、ゆっくりゆーっくりお待ちしております(*^ ^*) (2022年4月19日 10時) (レス) @page29 id: aade336626 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いずみ | 作成日時：2022年4月18日 22時
