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第3話(sm視点) ページ5

「誓約なんてしなきゃよかったよ」

小さく呟かれた赤の彼の言葉に反応する。

「え、それってどういう…」

「わかってよ」

俺の声に被せるように彼は言う。
彼は目を伏せ、再び椅子に座った。

「僕は…スマイル。君が気に入った」

急に飛んだ話に、俺は思考が追いつかない。

「そう…か」

首を傾げながら、とりあえず返事を返すと、
目の前で彼は笑い出す。

「本当に君は疎いんだなぁ」

馬鹿にされている、ということだけは伝わり、
俺の眉間には皺が寄った。

「何が言いたいんだよ。
何かあるならはっきり言ってくれ」

「ふ〜ん。じゃあ、言わせてもらうよ」

そう言うと、彼は突如立ち上がり、
本を掴んでいた俺の手首を引っ張り寄せる。

「…いっ、た」

手首から伝わるビリビリとした痛みに顔を歪める。
俺の目が、なんとか彼を捉えると、
彼はじっと俺の手の甲に描かれた紋章を見つめていた。

「こんな誓約、
僕なら簡単に塗り替えられるんだよ」

「…っ」

彼が紋章に触れようとしたそのときだった。

突如、赤の彼の手が、手首から引き剥がされる。
反動で、俺は床に腰を付いた。

何が起こったのか。
そう思って見上げると、そこには、
青の彼が立っていた。

「やめてもらってもいいかな」

そう言った青の彼の身体には、
バチバチと稲妻が走っている。

「こいつ、一応俺の誓約者なんで」

青の彼の目は金色に光っていた。

赤の手には、青の稲妻が走っている。
赤はその手をひと握りすると、一瞬にして、
稲妻は消え去った。

赤は、ギロリと青を睨むようにしてから、
口に三日月形を描かせた。

「な〜んだ。ちゃんと見てるんじゃん」

「…紋章が反応したからな」

青は手の甲を擦りながら言う。
それを見た赤は、笑いながら玄関の方へと歩いていく。
すると、外へ出る前に、ピタッと歩みを止めた。

「スマイル。僕は本気だからね」

その言葉を最後に、彼は輝く風を身にまとい、
空へと消えていった。

「大丈夫か」

「…あぁ」

青の彼が差し出す手を握って、俺は立ち上がる。
床に落ちてしまった本を拾い上げ、
テーブルの上に置いたとき。
ふと、俺の手の甲が目に入った。
それを見た俺は驚き、咄嗟に青の彼に見えないように自身の後ろに隠す。

「…じゃ、俺は帰るから。…気をつけろよ」

彼は、素っ気なく玄関から出ていった。
バタン、と扉が閉まるのを確認してから、
そっと手の甲を確認する。

手の甲の紋章は、
青を侵食した赤が少しだけ残っていた。

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しら(プロフ) - arisu(WT)さん» ありがとうございます(´;ω;`)励みになります...! (2019年2月3日 11時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
arisu(WT) - どうもアリスです!これめちゃくちゃ好こです!更新応援してます (2019年1月26日 9時) (レス) id: e4d3d4fa63 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - イワシ君さん» はじめまして!読んで頂きありがとうございます(´;ω;`)頑張ります!! (2018年12月27日 21時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
イワシ君(プロフ) - は、初めまして!とても楽しく読ませていただいています!もぉbroooock カッコよすぎです!応援してます!頑張ってください!! (2018年12月27日 19時) (レス) id: e9f141d671 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - 春雨さん» コメントありがとうございます!お褒めいただき嬉しい限りです(´;ω;`)これからも精一杯頑張ります…! (2018年12月11日 17時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しら | 作成日時:2018年12月2日 12時

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