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第1話(Na視点) ページ3

美しく、次々と水が溢れ出す噴水。
その噴水の縁に腰を下ろして、
揺らめく水面を眺める。
そこには俺の姿が映し出され、
いつもと変わらぬ白い翼が背中にはあった。

それを眺めながら、俺は歌を口ずさむ。
行き交う者は、チラっとこちらを見たり、
立ち止まったり。

「また、歌っているのか」

唐突に話しかけられ、
パッと声が聞こえた方に振り向く。

「…うん、好きだからね」

そこには、青い耳や尻尾に、黒い虎模様が入った
青年が立っていた。
彼は金色に光る目を細めて、俺と同じように噴水の縁に腰掛けた。

俺が歌っているとき、たまにこうやって聴きに来る
ウェアタイガーの彼はきんとき。
彼は呆然と空を仰いでいた。

「Nakamu、
どうしていつもここで歌っているんだ」

「…さぁ、なんでだろうね」

空を見上げたまま、彼はそう問い、
俺もまた、水面を見つめたまま答えた。

ふと、縁に置かれた彼の手に目をやる。
手の甲には、紫の紋章が浮かび上がっていた。
それを見て、俺は小さくため息を吐く。
やはりこの紫の紋章は、エルフの彼との
誓約の証だった。

「…じゃあ、俺はもう行くから」

一通り歌い終えたら、彼は立ち上がり、
どこかへ歩いていってしまった。

何故ここで歌っているのか。
そう問いた彼は、俺の核心に迫りたかったのか。
それとも、ただの気まぐれか。
俺が、ここで歌っている理由はただ一つ。
ここに居れば、彼が来るかもしれないから。
とはいえ、もう誓約を交わしている彼には、
もう近づくことができないと知っているから、
ずっと、この中途半端な距離を縮められずにいた。

また、しばらく水面を見つめてから、
俺は翼を羽ばたかせ、宙を舞った。
頬を掠める冷たい風が心地よかった。

自宅へ向かって飛んでいる途中、
ふいに、強い風が吹く。
その風は不思議なことに、キラキラと輝いていて、
微かに魔力を帯びている。
そのときだった。
唐突に、真横を何かが通り過ぎた。
…恐ろしいほどに、強い魔力を放ちながら。

その"何か"を目に捉えようと振り向くが、
そこには何もいなかった。
代わりに、様々な色に変化する羽が、
1枚だけ宙に浮いていた。
羽を手に取ろうと手を伸ばし、羽に近づいた瞬間、
手に電流が走った。

「_ッい…」

自分の手を見ると、小刻みに震えている。

「なんなんだ、この羽…」

そう言うと同時に、その1枚の羽が光を放った。
反射的に瞑った目を開いたときには、
その羽はもう消滅していた。

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しら(プロフ) - arisu(WT)さん» ありがとうございます(´;ω;`)励みになります...! (2019年2月3日 11時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
arisu(WT) - どうもアリスです!これめちゃくちゃ好こです!更新応援してます (2019年1月26日 9時) (レス) id: e4d3d4fa63 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - イワシ君さん» はじめまして!読んで頂きありがとうございます(´;ω;`)頑張ります!! (2018年12月27日 21時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
イワシ君(プロフ) - は、初めまして!とても楽しく読ませていただいています!もぉbroooock カッコよすぎです!応援してます!頑張ってください!! (2018年12月27日 19時) (レス) id: e9f141d671 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - 春雨さん» コメントありがとうございます!お褒めいただき嬉しい限りです(´;ω;`)これからも精一杯頑張ります…! (2018年12月11日 17時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しら | 作成日時:2018年12月2日 12時

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