短編集 (ページ11)

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旅立ちページ11

波が、音を立てている。ここには誰もいない、私一人。この浜辺にいるのは、私だけ。もう、誰にも何にも邪魔されない世界。

　あとは、自分の行きたい方向に、生きたい方向に向かって泳げばいい。何が起こるかわからない。カメや魚と仲良くなれるかもしれないし、サメに食べられるかもしれない。けど、行ってみないとそんなの分からない。目の前に見えているこの夕日に力をもらって、今飛び込もう、まだ見ぬ未来、まだ見ぬ世界へ。

　…太陽が照らしているにも関わらず、この海がどこに行き着くのかは見えない。私を、ちょっとだけ不安が襲う。もしもうまく泳げなかったらどうしよう。もしも食べられたらどうしよう。もしも遭難したら…

　そんなこと考えてたって、何も始まらないのは分かってる。そんなとき私は、今まで支えてくれた友達や家族や恋人のことを想う。そうすると、そのまま突っ走っていいんだよ、って。そう言ってもらえてるような気がして。

　じゃあ、行ってきます。

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