突然後ろから抱きしめられた【中原中也】

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「出せ」




ドスのきいた声で中原さんが黒服の人に命令する。
短い返事が聞こえ、ゆっくりと車が走り出した。


まずいまずい…これはまずいよ。
これからどこ行くの？絶対にポートマフィアだよね！？どうしよう。太宰さんは大丈夫かな？
まあ、あれくらいでは死なないだろうけど




「おいA。こっちこい」




俯いていた顔を上げると、出口付近に座っていた中原さんが座席をポンポン叩いていた。


つまりは、そこに座れと？




「丁重にお断りさせてもらいます」






ちゃんと笑えてるよね？にっこりスマイルで断れてるよね？
少しでも機嫌を損ねてみろ、私の首がぶっ飛ぶ。





「んな警戒する事ねぇだろ」





ちっと舌打ちしてから小さな箱を持ってこちらに近づいてくる。



その距離はあっという間に縮まり、ついには隣に座られた。
逃げようとすれば腕を掴まれてにっこり微笑まれた。


あ、はい。座れってことですね





「手前、頭から血が出てんだよ。さっき俺が壁に叩きつけた時にできた傷だ」




そういえば、思いっきり頭ぶつけてたわ。
色んなことがありすぎてすっかり忘れてた。



そっと触れてみると鋭い痛みが脳に伝わり顔を顰める。



思い出すと痛い…




そうな事を考えている間にも、中原さんは器用に物を取り出していくと私の後頭部に手を回した。


あの時のように回された手に心臓が跳ね上がる。





「じっとしてろよ」





言われた通り…というか半ば無理矢理に頭を固定されて目が離せない。





「っ！い、たい」





ピリピリ傷口が痛んで目を瞑る。



すると、後頭部に回されていた手が器用に私の頭を撫でた。






「そんな痛ぇか？」





作業している手は止めずに聞いてくる中原さん。
その声色はさっきとは打って変わって優しかった。





「そりゃあ痛いで、す…よ……っ！」





瞑っていた目を開けた私は、目の前の光景に目を見開いた。





「すまねぇ」





どうして…




開いた口は閉じず、ぽろりと言葉が漏れでた。





「なんで…なんでマフィアの人間がそんな悲しそうにしてるんですか？」





中原さんは眉を下げて笑っていた。



その瞳は悲しそうに揺れていて今にでも泣きそうだった。

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