少女の日記（上） ページ35
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一瞬だった。
家族がいなくなったのは。国が滅んだのは。
赤ん坊であったが国が黒い、紫色の霧に覆われたことを鮮明に覚えていた。父と母は私を抱えて逃げようとしたが、途中で生き絶えた。私を守ることに必死だったのだろう。
一人では何もできない私に手を差し伸べてくれた知らない人。誰だったかは今になっても分からないが、紫色のストール巻いた人だった。…生きているうちに一度は御礼をしたかったなあ。
この花の花粉から生成される毒は体内に入れると死んでしまうものだった。幸運なことにその成分は体内には入らなかったが、霧を体に大量に浴びてしまったため、体に抗体のようなものが生まれ、比較的毒には耐性がついた。
幼少期、あの国が滅びたこと、生き残りはいないことを知った。大量虐殺の兵器となった花のことをもっと知りたいと思った。…今後あんなことがないように。
本を読んだだけでは分からず、よく院を抜け出して隣国の国境までいって調べに行ったりした。しかし花は絶滅したとされ、情報は得られなかった。ならば、と孤児院の近くに花畑を作ることにした。
花のことはよく調べていたので、植物には興味があった。植物を育て始めたのはこのときからだった。
「花の何がいいんだ？」
仲良くなり始めたグルくんがある日聞いた。孤児院を抜け出していることはグルくん達にはバレていた。
「私の夢なの」
「夢？」
「秘密だけどね」
「じゃあ俺も教えるから教えろ」と食い気味に言った。私は「分かった」と頷いた。
「俺は国を変えたい。革命を起こすんだ！
…いや、俺たちで国を変えよう」
「へえ！」
「………なんだ、笑わないのか？」
「笑わないよ。だってグルくんができないわけないもん。私もグルくんの夢のお手伝いしていいの？」
「…っはは！当たり前だ！」
無邪気に笑うグルくんはとても嬉しそうに見えた。私も何故だか、同じくらい嬉しくなった。そしてグルくんは「次はお前の番だ」と言った。
「私はね………あるお花を見つけること、かな」
「花…？綺麗な花なのか？」
「………多分。見たことはないけど、…きっと綺麗だと思う」
「…そっか。じゃあ俺もその夢手伝わせてくれ」
「！………いいの？」
「勿論！」
「…ありがとう」
きっと、それは無い。
未来を背負ってくであろう貴方にこんな役目を負わせるほど、私は馬鹿ではない。
幼いながらも私は彼らの夢を支えていきたいと、心の中で誓ったのだ。
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まちや。(プロフ) - Yuik111400さん» うわあ！素敵なお言葉ありがとうございます！！そう思ってもらえてなにより嬉しいです！！ (2019年4月21日 11時) (
レス) id: e16223c2be (このIDを非表示/違反報告)
Yuik111400(プロフ) - あれぇ？視界がボヤけてる...この作品凄くよかったです。声を殺して泣きました。こんな素敵な作品に出会えてよかったです。ありがとうございます！ (2019年4月20日 0時) (レス) id: d5c9d61335 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まちや | 作成日時：2019年2月3日 6時
