魔王の背中 ページ9
天月side
えっとね、簡潔に言うと、
僕、殺されそうです。
足の先から徐々にまかれている蜘蛛の糸
元々逃げ出せないように縛られていたが、その上からぐるぐるまきにされている
頭の先までくればきっと繭のようになるのだろう
抵抗しようにも糸がまかれる速度が速く、
どんどん自由が利かなくなる
これは本当にまずいのでは…?
「人間の王子よ…其方に恨みはない。だが、魔物の誇りのため、死んでくれ」
「王子が魔物に殺されたと知られれば人間は黙ってないはずだ」
「かつてのようにこの城へ進軍してこよう」
「さすれば大魔王もお目覚めに…」
「なに私の客人に手を出してるのよ」
聞き覚えのある声と共に、
僕の回りにいたスパイダーを散らすように、黒いもやが僕を取り巻いた
そのもやが人型を成すまでの間に、僕を縛っていた糸は切れていた
急なことにスパイダーも驚いていると思いきや、彼らは動じていない
「遅れてごめんなさい。立てる?」
そういって手を差し伸べてくれるAちゃん
彼女の手を取り、立ち上がり彼女の横に立つ
「お嬢様……」
スパイダーは口々にそう呟くと、彼女へ頭を垂れた
どうやら敵対しているというわけではなさそうだ
A「毎度毎度、ほんとにしつこいわね」
「……。我らだけではありません。ニンゲンと交わした条約に不満を持つ者は一定数、いまだにいるのです。お嬢様もその一人と思っておりますが……」
A「…そうね。そうかもしれないわね。だけど、それは貴方達がどうこうできる問題じゃないわ」
一言一言に威厳を乗せてそういうAちゃん
初めて魔王らしいところを見た気がする
なんて、失礼だろうか…
立場的なことを言えば、僕と彼女は似ている
僕は王子で、彼女は魔王
いづれはそれぞれの住人の上に立つ
だけど、僕と彼女は違う
僕は王子なんてやめてやる、と96ちゃんを困らせるほど口にしている
僕にとって王子なんて座は窮屈で、名ばかりの名声なんて欲しくなくて
坂田たちと同じ町に生まれ、駆け回って、悪戯をしていたかった
大人たちの一方的な思考を押し付けられることも、命を狙われることもまっぴらだった
でも、彼女は違う
A「けじめは私がつける。それでも不満があれば、面と向かって私にいいなさい。魔物が姑息な手段を使うんじゃない」
彼女は、全部抱えて歩いているんだ
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MOA(プロフ) - 続き楽しみに待ってます! (2021年5月17日 19時) (レス) id: 968a47ffc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:武蔵野 三歩止(ムサシノ ミホト) | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年8月29日 10時