5 ページ21
「すいません先輩、こんな時間まで付き合わせちゃって…」
眉を下げて言うと先輩はぶんぶんと首を横に振る。
「全然っ！だってAちゃんの歌が聴けたから！
凄く綺麗だった！二時間も歌ってたけど大丈夫？」
今度は先輩が眉を下げる。
「全然大丈夫ですよ〜。このくらいでへこたれてたらアイドル出来ませんって。
まあでも送らせて下さい。遅くなっちゃったのは私のせいなんで」
笑って言えばあんず先輩は遠慮する。でも送らないと気が済まないと言えば渋々引き下がる。
本当に先輩かこの人。
小動物にしか見えない…。
どっぷりと沈んだ空を見て校門に目を移すと人影。
見たことのない黒髪の男だ。
「…？Aちゃん、どうし」
「しっ不審者かもしれません」
あんず先輩を引っ張り物陰に隠れる。
肩から顔を出して人物を見たあんず先輩はあっと声を漏らす。
「ごめん、あれ弟だ…迎えに来てくれたのかな」
「あ、え、弟さん？何だ、びっくりした〜…」
ふうと息を吐く私に苦笑いでごめんね、と言う先輩。
「ん〜じゃあ送らなくても良さげですね」
「そうだね。ごめんね…」
「いやいや！先輩が無事に帰れればいいんですから！
それじゃあさようなら。また」
手をひらひら振って見送ると先輩も笑って手を振る。
さて、と。
くるりと踵を返して学校に戻る。
今の時間ならいるだろう。
真っ直ぐとその教室に向かう。
暗い校舎にコツコツという自分の足音だけが響く。
月明かりに照らされて光る廊下をただただ進む。
目当ての教室に着くと迷いなくバンッとドアを開ける。
「…何じゃ、もう少し静かに開けておくれ」
欠伸混じりにそう言う彼に紙を差し出す。
「お仕事ですよ。吸血鬼先輩」
その紙を寝ぼけた目で見ている先輩に言うと驚いたよう。
「…これ、本気で言っておるのか？」
驚きの含んだ赤色の綺麗な目がこちらを見据える。
にやり、笑って答える。
「ええ。本当は私一人だったんですけど、それじゃ寂しいので。
やりますよ。"夢ノ咲学園特集"」
ぱさりと落ちた紙はするりとドアの向こうに行ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狼(プロフ) - カルピンさん» うわあああごめんなさい！仮にもらびおじなのに…俺の阿保… ありがとうございます！頑張ります〜！ (2017年3月5日 18時) (
レス) id: 487fc714f0 (このIDを非表示/違反報告)
カルピン(プロフ) - こんばんは、楽しく見させて頂いております。仁兎の字が間違っていますよ。(なんかそっけない文ですいません(泣 これからも頑張ってください！ (2017年3月4日 6時) (レス) id: 585f549c90 (このIDを非表示/違反報告)
狼(プロフ) - ウィング・ジョーカー《sgsyi 》さん» ありがとうございます！言葉が綺麗なんてそんな…！恐縮です！書いてる人間の心は汚いですけどね(( (2016年11月11日 21時) (レス) id: 487fc714f0 (このIDを非表示/違反報告)
ウィング・ジョーカー《sgsyi 》(プロフ) - こんばんわ！この小説読んでてとても面白いです！言葉がとても綺麗で読んでてまず飽きません。これからも頑張ってください！応援してます！ (2016年11月11日 19時) (レス) id: 3f8be5b0cb (このIDを非表示/違反報告)
狼(プロフ) - 瀬名 凛さん» いや、一風変わった子の方が面白いなって思ってて。キャラは基本爆発させてます。キャラ崩壊しててすいません((ありがとうございます！更新頑張ります〜！ (2016年9月24日 21時) (レス) id: 487fc714f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：狼 | 作成日時：2016年9月20日 0時
