49、反感(真咲視点) ページ2
世子嬪の部屋の前へ来たとき
すでに、母上が来ていて
医女に世子嬪について、いろいろ聞いていた。
「世子嬪の容態は?」
「手のひらを擦りむいただけで
他は大丈夫です」
「そう…
いずれは世継ぎを身篭る身体。
大したことがなくて良かった」
母上のその言葉に一瞬、時が止まった。
そうか…
王子様や、王女様以外にも
俺と世子嬪の子どもが必要なんだ…
正直、王子様がいるし
そこは気にしなくて良いと思ってた。
でも、何が起こるかわからない王宮。
世継ぎは多い方が良いのか…
「世子」
「はい。母上」
「あれから世子嬪の元へ来ていないとか。
世子は世子嬪が嫌いか?」
「いえ、そんなことは…」
「では何故、来ない。
この王宮で一番頼られなければならない世子が
何故、世子嬪を遠ざける。
まだ世子の自覚が足りないのではないか?」
痛いところを突いてくる…
確かに自分でも中途半端だと思うし、
頑張ってる!なんて言えたもんじゃない。
でも、上手く飲み込めないというか
反発したくなる気持ちが拭いきれない。
俺のこと、何も知らないくせに!!!
って突き放すのは簡単。
でも、そんなことしたくない。
でも、でも、イライラする。
だから余計に何も言えない。
「義母上様、落ち着いてください」
母上の声が部屋にまで聞こえていたのだろう。
心配して、世子嬪が外へ出てきた。
「世子嬪、部屋で休まなくては」
「それほど心配なさらずとも、大丈夫です。
私はただ転んで、手のひらを擦りむいただけです。
こんなことで大騒ぎしていては
命がいくつあっても足りなくなってしまいます」
「そうかもしれないが…」
「それに義母上様が心配なさるほど
世子様は私のことを放置している訳ではありません。
私に何かあれば、こうして政務を置いて
私の元を訪ねてくださいます。
それだけで私には十分です」
「そうは言うが、世子嬪。
いずれは国の父と母になる二人です。
誰から見ても仲の良い夫婦でいなくては」
「義母上様。私たちは婚姻してから、
それほどの月日が経っておりません。
速度は周りよりも遅いかもしれませんが
もう少し、見守っていただけませんか?」
世子嬪が、俺をかばってくれている。
母上の機嫌を逆撫でしないように
言葉に気をつけて、宥めている。
なんで、俺のために、そこまでするんだろう。
俺は世子嬪に、何もできていないのに…
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ