28、王女か王子か(花嬪視点) ページ29
私が妊娠してから
王様がよく来てくださるようになった。
｢王様｣
と礼をすると
｢わざわざお出迎えせんでええで？
今は安静第一やろ？｣
決まって、こう言われる。
｢少しは身体を動かさないと
体力が落ちてしまうので｣
と笑顔で返すと、安心したような、
仕方ないなぁというような困った笑顔になる。
その笑顔に優しさが詰まっているように
私は、いつも思う。
｢王様、少し、お散歩しませんか？｣
｢え？｣
｢今日は月が綺麗みたいですよ｣
｢んー…じゃあ、行こか｣
｢はい。王様｣
王様と並んで歩く月明かりの道。
私のことを気づかって、ゆっくり歩いてくれる。
その優しさだけで、十分すぎるほど嬉しかった。
｢花嬪は不安とか無い？｣
｢不安…そうですね。無いと言えば嘘になりますが
こうして王様が気にかけてくださるので大丈夫です｣
｢ほんまに？無理してへん？｣
｢無理などしていませんよ｣
と笑って答えても、あまり信じてもらえないので
｢王様は男の子と女の子どちらが良いですか？｣
｢えっ？｣
｢産まれてくる子の話ですよ｣
少し話題を変えてみた。
そしたら私が思っていた以上に悩む王様。
優しい方だとは思っていたけれど
そんな反応をされると、可愛く思ってしまう。
怒られるかしら？
｢元気な子なら王子でも王女でもええよ。
母子健康なら良し！｣
そうか。
産まれてくる子は王子か、王女になるのか…
王子だったら、いずれ世子にもなる…？
いやいや、王妃様を差し置いて、
そんなことはできない。
｢花嬪は、どっちがええの？｣
｢そうですね…私も元気なら、どちらでも良いです｣
�爐任癲�王女ではなく、王子だったら
周りからの圧力も、もう少し柔らかくなるのかな…
なんて言ってしまいそうになった。
そんなことを言っては、この子が可哀想だし、
いくらなんでも自己中心的な考えすぎる。
気をつけなきゃ…
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