157話:冷 ページ7
『太宰さん?どうしましたか?』
私はそう言って話をもちかけた。
でもノイズばかりで、何も返答が帰ってこない。
(何してるんだろ…?)
電話をつけたまま、少し待った。
もしかしたら待った方がいいかもしれないと思ったから。
【死んでしまいたいんだ】
しばらくすると、小さく弱くそう聞こえた。
予想外だったので少しフリーズしてから『どこにいますか?』とすぐに場所を聞いた。
【…い、つもの川だ…】
(ん?)
外…?
こんな台風が出てる今に…?
何かの冗談だよね…?
でも太宰さんの声がすごく暗く、声だけでも゙異常゙と分かる声だった。
その異常はとっっても良くない異常。
『ッ…待っててください。迎えに行きます』
【…】
『いいですか?1歩でも動いたら迎えに行きませんからね!』
私はそう言って何も持たずに家を飛び出した。
太宰さんの返事は帰ってこなかったけど、ちゃんと聞いていると思う。
ケータイを耳に当てたまま、私は言われた通りに川に向かった。
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(風が冷たい…それに足が重い…)
水もすって風のせいで上手く前も見えないけれど、辛そうにしている彼を放っておけない__と言う一心で意地でも動いた。
疲れが襲ったり、気だるさを感じながらもなんとか川につくと…川の真ん中辺りに人影が見えた。
身長の高い太宰さんは意外と早く見つかる。
(居たっ!)
風に押されながら太宰さんにできるだけ近づいた。
『太宰さん』
「っ!」
声をかけると彼は私の方を見て、ぽろぽろ…と涙が溢れていた。
ずっと電話越しでも泣いてることを悟られないように声を殺して居たんだろうな。
私は太宰さんの目の前で電話を切って、水の中に足を入れた。
片足ずつ…。
どぼっ_
(ヒッ…足が凍りそう)
死ぬほど冷たいけれど、目の前にいる彼はもっと苦しんでる。
そう思うと耐えなきゃならないと思えた。
ゆっくり、ゆっくり1歩1歩近づいて、目の前に着くと私は太宰さんを抱きしめた。
ぎゅゅっ…
『大丈夫。』
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シグマざん(プロフ) - シアさん» コメントありがとうございます。了解しました (1月11日 0時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)
シア - 江戸川乱歩オチも作っていただけませんか? (1月9日 7時) (レス) id: 5afea0a2a0 (このIDを非表示/違反報告)
シグマざん(プロフ) - 冬華さん» ありがとうございます!!ひとつの事に集中するのは苦手で更新は遅くなってしまいますがとても嬉しいです! (9月18日 16時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)
冬華(プロフ) - 恋愛系の久しぶりに読むんですけど、話の展開に無理矢理感がなくて気持ちよく読めました!沢山の作品を同時に作ったり、アイデアを出せるシグマさん、尊敬します! (9月18日 14時) (レス) @page13 id: 62d80712bb (このIDを非表示/違反報告)
シグマ(プロフ) - raiさん» 少しずつですが頑張ります。ありがとうございます (8月15日 14時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2022年9月27日 23時