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ふと、視線を逸らすと太宰様が私達を見ていた。
その瞳はまた泣きそうな瞳をしていた。
『太宰様はなにを描いたのでしょうか?』
私はそう聞きに行った。
すると彼は我に返ったのか絵を見せてくれた。
『!』
そこには、私達3人が描かれていた。
__絵を描いている2人に後ろでバタバタ走っている私。
(短時間でなんでこんな上手く描いてるんだ!?)
あまりにも上手でそう思った。
絵はアニメ化されていて、線画のラフのようだった。
『スゴイですね!』
私は自然とそう言葉を漏らした。
すると彼はじーっと私を見ては口元を緩めて微笑んでくれた。
「そうかい?」
『はい!ここまで上手い人は中々居ないと思いますよ!』
『私もここまで描けたらカッコイイんですけどね』と絵を見てそう言った。
…ここまで描けたらもうなんでも書けそうだ。
イラストレーターなんてどうだ!
きっと色をつけたらもっと良くなる。
そしたらマフィアなんか辞めてもきっと食って行ける!
『頂いてもいいでしょうか?』
「嗚呼、どうせ要らないからね。あげるよ」
私は計3枚の描かれた紙を貰えた。
…誰かからの贈り物だなんて、初めてでとっても嬉しい。
なんだか心が満たされた気がして暖かかった。
思わず涙が溢れそうになると「「A!」」と叫ぶ声が聞こえ、そちらを見た。
「ワタシの方が上手かったわよね?」
「僕の方が良かったよね?」
_ダザイより!
_太宰さんより!
2人はどこか焦ったようにそう言っていた。
傍で太宰様は呆れていた。
『…ふふ、ふふふっ、あははっ!!』
私は思わずその場で大笑いしてしまった。
なんだか、その必死さが面白くて呼吸が上手くできなかった。
ひぃひぃ…とその場に声が上がっているのは私だけ。
3人は何が起こったのか分からなかった顔をしていた。
「「「!」」」
『みんな、よかった、よっ。ほんとにっ…ふふふっ』
まだ笑いが止まらず、その後しばらく私は笑い続けた。
3人は何がツボのかよく分かっていなかったが、その場は確かに柔らかな空気が占めていた。。
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2023年10月19日 16時