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するとQは体を起こしキョロキョロ周りを見ていた。
見慣れない部屋に見慣れない布団。
違和感を感じるのは当たり前だろう。
「此処は?」
「君の大好きなAの寝室だよ」
「えっ!」
私がそう言うと、Qは少しだけ目を見開けた。
辛そうな顔なのは変わらないが、少しだけ頬が緩み、布団の中に戻って行った。
そして毛虫のように顔だけは出してぎゅーっと包まれるように動いていた。
「…Aは?」
「彼処で家事と夕食の準備だよ」
「……」
(あ、出てくるんだ)
QはAが居ることが分かったのか、布団から出てきた。
そして私の方を1度睨んでは、寝室から出て行った。
__付いてくるな、と言いたいんだろうか?
ついて行かないわけがないんだけどね。
(やはり重症)
あそこまで依存していると、もはや病気だ。
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「A!どこ!」
ふと、そんな私を探している声が聞こえた。
太宰様にしては声の高い男の声。
『…?』
思わずベランダで振り返ると、そこにはリビングの辺りをウロウロしているQ様が居た。
だが、すぐにこちらを見つけては走ってきてくれた。
しゃがみこむと、ぎゅーっと抱きしめた。
「A、離れたらヤダ」
そう言って回ってきた腕は震えていた。
やっぱり、辛い現実は、希望を抱くと辛くなってしまう。
私は優しく背中を撫でた。
『ごめんね。でも、代わりに太宰様が居てくれたでしょ?』
「Aじゃなきゃ意味が無いのっ!」
『う、うーん…でも……あ』
ふと、視界には此方を見つめている太宰様が居た。
私は『見ていて下さってありがとうございました』と一礼した。
「私では意味なかったようだね」
『いえ、そんなことはありません』
_役に立ったと思いますよ。
私は微笑んで彼を見つめたそう言った。
そんな私に対して、彼は尋ねた。。
「なぜそう思うのだい?」
『Q様が動けましたので』
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2023年10月19日 16時