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そこから1時間、2時間…長い時が過ぎた。
流石、精神系の異能力。
目の前の悲鳴の声を聞き続けて、こちらが辛かった。
涙も止まらない。
もう疲れた。
…いつになったらこの精神世界は解けてくれるんだろうか?
『…お願いですから、黙って…』
ふと、そんなことを呟くと目の前が白く光った。
思わず目をつぶり、少しして開けると_見慣れた世界に戻ってきた。
『!』
目の前には異能を発動させている太宰様が居た。
目が合うと彼はホッと一息ついていた。
「すまない、遅れたよ」
『太宰様…』
すぐに私は下を見ると、そこには泣き疲れて眠っているQ様が居た。
ソッと手を離し、体をあげた。
『私、戻ってこれたんですね…』
「A!!怪我はない?」
不意にぎゅゅっと後ろから抱きつかれ、私はエリス様の頭を撫でた。
彼女の顔を見ると、泣いていたのか目元が赤かった。
(泣いてたんだ…)
すぐにその場でしゃがみ、彼女を抱っこした。
そして近くなった距離でポンポン、と背中を撫でた。
「まさかびっくりしたよ…太宰君があんなに眠るなんてね」
ふと、森様がそう言った。
目を向けると太宰様は「はいはい、悪かったね」と不機嫌そうに呟いた。
「そんなことより、詳しく分からないんだが。
なぜQは暴れだしたんだい?」
「私のせいなんだよ」
「森さんの?」
そう言って、森さんは事情を伝えてくれた。
Q様が自由に歩きたいと、初めて言い出したこと。
そして、それについて断ったら事まで。
太宰様はすぐに理解した。
そして眠ったQを抱き抱え「どうする?」と声をかけていた。
「ふむ…どうしたらいいだろうか。A君」
森様の瞳は私に向いた。
予想外だったので、思わずビクッと体が跳ねた。
『わ、私ですか?』
「君の判断の方がQは納得するだろう」
『…私は彼を牢に戻した方がいいと思います』
私はQ様を見てそう言った。
それが、彼のため。
…ちゃんと救ってくれる人が救うべきだろう。
(それにもう少し異能力を鍛えるべきだ)
危ないことに使うんじゃなくて、身を守るために。。
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2023年10月19日 16時