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『……』
私はメイド服を脱ぐとエリス様の視線はじーっと私を見ていた。
そのまま、仮面に手をつけた。
(…外したくないな)
この下だけは、子供に見せるものじゃない。
「A」
『ん？』
ふと、名前を呼ばれてそちらを見ると彼女は辛そうな目をしていた。
手を握り「大丈夫？」と心配してくれた。
『見苦しいですか？』
「ううん…大丈夫」
彼女はそう言って、傷のある場所に触れた。
お腹に優しく触れ青くなっている痣を撫でてくれた。
「痛い？」
『はい。でも撫でてくれたので大丈夫です』
私はそう言ってお風呂のドアを開けた。
仮面はつけたまま、エリス様と手を繋いで、お風呂に浸かった。
＿＿私の体には虐待の跡が残っている。
蹴られた跡や鞭打ちの跡など、顔の火傷よりはマシな傷。
エリス様は私に一段と気遣うように接してくれた。
(そんな顔させたい訳じゃなかったんだけどな)
私はお湯から手を出し、背を向けてくれているエリス様の長い髪に触れた。
手で解し、お団子にして髪をまとめた。
「Aは両親を嫌っていないの？」
ふと、エリス様の声が浴槽に響いた。
その声は怒っている声で、私の代わりに怒ってくれてるようで、嬉しかった。
『嫌いだよ』
「なら、どうして復讐しないの？」
「害を持ってくる人は殺すべきだわ」とエリス様は強気にそう言った。
私はエリス様のお腹の上に手を添えた。
『復讐したいんだけどね、したくないんだ』
「…血縁者だからしにくいの？」
『ううん、違うんです。そうじゃない』
「どうして？」
『この恨みを忘れたくないんです』
＿相手が生きていれば、されたことは忘れない。
生きていなくても記憶に刻み込まれるだろう。
しかし、記憶を失っても相手が居ればまた恨むことが出来る。
『もし私がエリス様に暴力をふるったらどうしますか？』
「受け止めるわ」
『そ、そんなことしないでくださいよ？
エリス様は私を殺してもいいんです』
私は多数の暴力と少数の優しさの中で育った。
少しの優しさがあったら、全てを恨むことが出来ない。
『私はあの人達と同じように、エリス様に暴力を振るわないか怖いんです。
もし、同じようにしてしまったら…私は同じように恨みを持たれ殺されてしまうから。』
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作者名：シグマ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時：2023年10月2日 7時
