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ぎゅゅゅっ、と強く抱き締めてきた。
私はびっくりして『汚いですよ!』と声をかけても、エリス様は離さなかった。
(お風呂に入れてないのに…)
「Aっ、A…良かったぁっ…」
『……エリス様…』
「Qの異能力に掛かったのっ…死んじゃうと思ったわッ」
そういうエリス様の回ってきた手は震えていた。
本当に怖くなって、辛かったのだろう。
…私は抱き締め返して、安心させるように撫でた。
(怖い思い、させちゃったのかな?)
そんなことを思った。
エリス様の精神面的には強い方だと思うけれど、流石に誰かが死にそうになると、怖がった。
__ちょっと安心した。
まだ彼女は命を大切に出来る子だ。
マフィアに居て感覚を失ってもおかしくないのに、心優しい子だ。
『ごめんなさい、エリス様』
抱き潰しそうになるほど、抱きしめると、エリス様は泣き始めた。
腕の中で荒く息をしている姿を見ると何も言えなくなった。
(【死んじゃう】か…)
私は、自分の命が好きじゃない。
死にたくは無いけれど、生きていたくもない。
だって、こんな捻くれ者が生きていても、ただのお荷物だから。
エリス様を本当に救う人はきっと私じゃない。
でも、見捨てることも出来ないから中途半端な物しか渡せない。
『…ごめんね、エリス様…』
「……」
優しく抱きしめる私に、エリス様は笑っていた。
____
__
_
「もうQのところに行っちゃダメよ」
彼女が落ち着くと、そのまま腕の中でそう告げた。
その言葉に苦笑いして誤魔化した、
しかし、彼女は私の手のひらに触れて「ダメよ」と強く念入りに押された。
『でも、心配です。あんなところに一人なんて…』
「……」
『過去に経験したことがあるんです。
一人ぼっちはとても寂しくて、話す相手も居ませんから』
_せめて朝だけでも。
私はエリス様にそう伝えた。
目が合うと、彼女は視線を逸らし「そんな目をしないで」と口に出した。
「ワタシだって寂しいの。Qばっかり行くんだもの。
忘れて欲しくないわ。」
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2023年10月2日 7時