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「あーあ、せっかく頑張って隠したのに」
ふと、Qは顔を歪めてそう言った。
顔を向けると、奥にいる彼女は涙は流さず、気を失っていた。
「残念だったね」
「ふふん、でも別にいいんだ！」
「？」
元気に言うQに違和感を持った。
振り返ると、彼は不気味に笑っていた。
そして眠っている彼女の首元を愛おしそうに見た。
(嗚呼、キスマークか)
「たくさん付けれたから満足なんだ！」
「…壊そうとしたのに、そんなので満足なのかい？」
＿＿理解できないね。
Qならもっと早く簡単に壊すはずだ。
でも、そうしないのは何故だろうか。
するとQは笑っていた。
「分かってないなぁ。
これは2つの意味があるんだよ。太宰さん」
彼は気分良さそうにそう言った。
暗く睨んでくる表情はせず、ニコニコして世界を楽しんでいるようだ。
(エリスへの挑発と…なんだろうか)
1つ目はすぐに分かった。
エリスを憎んでいるのはすぐに分かる。
ただ、2つ目は分からない。
キスマークなんて数日で消えてしまう。
＿＿＿＿＿それなのに意味があるのだろうか？
「明日が楽しみだなぁ」
「……」
Qはそう言った。
彼から”明日”なんて言葉が出てくるのか。
(……)
とりあえず、私は彼女を持ち上げ牢から出た。
引き止める訳でも無く、持って行っても構わないと言う顔をしていた。
「ばいばーい」
「…」
私は彼女を手にし、少しの階段を昇ってエレベーターに乗った。
彼女は綺麗な寝顔をしていて、泣き疲れているように見えた。
(エリス、Q、と来たら次は誰だ？)
中也か森さん当たりだろうか。
一体、彼女はどれだけこのマフィアを変えられるのだろうか。
「見物だね」
＿＿＿＿
＿＿
＿
「ふふふ、ふふふっ」
牢の中でQの笑い声が響いた。
布団の中に入り、楽しそうな声に反応する者は居なかった。
彼の傍には髪の毛数本と、ボールペンが置いてあった。
愛おしそうに髪の毛を見つめては軽く口付けをした。
＿彼女に対しての愛が止まらない。
愛し方も、接し方も、彼は何も知らない。
しかし本能が思うままにすると何だかとても気が楽になった。
たくさん残した彼女のトラウマに、首の傷。
これでしばらくは嫌でも彼のことを思い出してしまう。
「また、会いに来てくれるよねっ」
＿＿Aはまた来てくれる。
すると彼はまた笑いだし、辞書を開けては”恋”のところにチェックマークを入れた。。
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作者名：シグマ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時：2023年10月2日 7時
