【文スト】才能なしの救い (ページ35)

今日:4 hit、昨日:57 hit、合計:37,205 hit

35 ページ35

「太宰さんは知らないんだ」

ふと、そんな言葉が聞こえた。
私がQを見つめると、彼は不気味に笑った。
ただ幸せそうに笑っては、喋らない彼女の手のひらを握っていた。

(……)

＿＿＿あんなに絶望していたQがここまで元気になった。

強い異能力に恵まれてしまい、危険人物となってここに閉じ込められたQ。
死んでしまいそうになるくらい弱ったメンタルを彼女は出会って1週間で直した。

正直、異常だ。
でも、ここまで変わったのが羨ましい。

(私も、私のまま変われるのなら…)

「何を知らないんだ？」

(変わってみたい)

私がそう問いかけると、Qは「うーん」と考えては、視線を彼女に向けて首元にまたキスマークを残し始めた。

「教えないよ。
だって、ライバルが増えても困るのは僕だもん」

Qはそう言った。
彼の言うライバルとは、きっとエリスのことだ。
エリスのように依存する存在が増えたら困ると言うことだろう。

(エリスやQや森さんが持っていて、私に持っていないもの)

さぁ、なんだろうか？

知識？
経験？
考え方？

少し考えても何も思いつかない。
そもそも、3人には共通点が少ない。

エリスと森さんだけなら簡単に推測できても、Qとなればまた変わる。
なぜなら、森さんとQの接点が少ないからだ。

(まぁ、そんなことやり頼まれたことをしないとな)

私は溜息をつき「人形はどこだ」と声をかけた。
狙いはQの異能力解除だ。
……私の気持ちは二の次だ。

「言わない！出てって！Aは僕だけのモノ…」
「……」

「僕だけのA、嗚呼っ、A♡」

Qはすぐに機嫌を取戻し、ちゅ〜とキスマークを付けていた。
イチャイチャしているところを横目に、私は牢の中に入り、人形を探した。

＿牢は開けた。

「……」
「A、一緒に居ようね」

(逃げないのか)

今までは牢を開けると直ぐに逃げ出したのに、今は盲目になってAだけを見つめていた。

「A、一緒だよ」

(嗚呼、そう言えばさっきも聞いたな)

【ダザイ。お願いワタシAと居たいのっ！】