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『私?』


思わず目を丸くすると、Q様は「うん!」と目に光を入れて楽しそうにそう語った。
すると撫でている手の手首を捕まれ、無理やり頬の方に移動した。

柔らかな頬に触れると、彼は嬉しそうに頬を赤らめた。


(可愛いなぁ)


__でも、私が欲しいとは…?


それが心が引っかかった。
Q様を見ると今までとはうって変わって幸せそうにしているのを見ると、何も突っ込めなかった。

不意に時計を見ると、もう30分経っていた。


「A、まだここに居て」
『!』

「僕、Aの隣に居たい…お願い」


ふと、心を読まれたように彼はそう言った。
いつもこの時間に出て行くから覚えたんだろう。

私は手を動かし頬を撫でて『ごめんなさい』と願いを断った。


「……」
『また明日も来るよ。だからその願いは聞けないです』


そう言って手を引こうとすると、逆に引っ張られた。
思わず顔を上げると、Q様の瞳が見えた。


「…エリスのせい?」
『……』


(真っ黒…?)

__そんな…だって少し前までは本当に綺麗な瞳を…


信じられない光景に言葉を失うと、Q様は顔を歪めた。
そしてボソボソと口を開けた。


「______。___のメイドだから。
Aはエリスのメイドだから僕から離れて行くんだ」


ふと、そんな声が聞こえて我に返った。
優しく『きゅ、Q様?』と、声をかけると、その瞬間、視界が歪んだ。


(え?)


視界がぐにゃりと歪み、Q様の万遍の笑みが見えた。
それは不気味に笑っており、狂気じみた瞳をしていた。


「僕が、壊してあげるよ」
『あ”ぁ…あっ…Qッ…』

「ドグラ・マグラ」


その瞬間、Qの傍にあった人形が裂けて行った。
ビリビリと真っ二つに裂けてしまうと、彼女は苦しそうに声を上げた。


『あ”あ”あ”あ”っ___』
「あははっ☆」


Qは、壊れていく彼女を見て笑っていた。

優しく強く微笑む光ある彼女の瞳が、黒く濁って落ちて行く。
苦しそうに目元を抑え、体は恐怖で震えていた。

Qは楽しそうに立ち上がり、牢を開けた。
そして、座り込んで震えている彼女を抱きしめた。


「捕まえた」


そう言う口元は緩み、彼女の手を引いて牢の中に引き込んだ。

…鼓動が高まり、心臓が痛い。
__初めて、望んだものが手に入れられた。


(嗚呼、しあわせだっ!)

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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//  
作成日時:2023年10月2日 7時

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