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『そのお人形さん…大好きなんでしょうか?』
あえて私は話を振った。
様子を伺うように、Q様を見ると「うん!」と元気に返ってきた。
「可愛いでしょ?僕の人形」
(ひっ…)
Q様は牢越しに大きく見せてくれた。
ただ私には恐怖耐性があまりないため、目線を咄嗟にズラし遠くを見た。
『う、うーん…悪くないセンスだと思います…』
「もしかして、怖いの?」
そう言うQ様は悲しそうな瞳をしていた。
そしてお人形を少し見ては、チラッと私を見つめた。
少しづつ瞳は濁って行っていた。
(あっ、だめ!)
_築き上げた信頼が壊れて行ってるような気がした。
なんとか信頼を得て、寄ってくれたのに絶望される。
そんなこと、困る。
すぐに口を開けた。
『こ、怖いです。正直言うと怖いっ、です!』
「…」
『でも、お人形さんが怖いだけでQ様は怖くありません!』
そう言って私は手を伸ばした。
彼は傍に居るため、簡単に手が届く範囲だった。
(精神系の異能__)
ふと、そんなことが頭によぎった。
その瞬間、体が触れるなと忠告してきた。
Q様はとても危険な存在で森様やエリス様を見たから、すぐに理解した。
(でも_)
幼い彼を1人で閉じ込めていい理由にはならない。
異能力を持ってしまったせいで…
才能がなかったせいで…
一人ぼっちだなんて。
私のような捻くれ者が出来上がってしまう。
「!」
私は彼の頭に手を伸ばして、触れた。
柔らかなサラサラとした髪に触れ、ゆっくり腕を動かした。
『ほら、私、Q様には触れれるんですよ』
優しく微笑んでそう言った。
Q様は少しの間ぼーっとして、撫でられることにソワソワしていた。
私はその様子を見て微笑んだ。
(嗚呼、やっぱり安全だ)
怪我をさせなければ、ただの普通の子。
こんな所にいて、きっと一人で寂しかったはずだ。
「欲しい」
『…?』
「僕、お姉さん…Aが欲しい…」
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2023年10月2日 7時