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私は明日の朝食を買いに、外へ出た。
1日ぶりの外は相変わらず変化はなく、普通に買い物に出かけた。
(Q様って何を食べるんだろう?)
野菜を前にそう思った。
やっぱり、人によって好みは違うだろう。
(やっぱり日本人だし、安定の米?)
食べやすいようにお粥にする?
それとも子供が好きなハンバーグとか?
いや、変化球としてうどん?
うーん、と深く悩みながら3日分の食材を買った。
だいたい3日に1度買い物に来るくらいでいいだろう。
『……悲しむ人が少なくなりますように…』
私は眠る前に、両手を握ってそう空へ願った。
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おぼんに2人の分の料理を持ってエレベーターに乗り込んだ。
そして誰とも合わずに地下3階まで降り、開いているドアの中に入った。
「…お姉さん」
『おはようございます、Q様』
笑顔でそう言うと、Q様は料理に目を向けていた。
Q様は昨日と全く同じ場所に座っていて、傍には辞書が置いてあった。
(勉強でもしていたのかな)
そんなことを思いつつ、牢のそばまで寄っては右下の食器を受け渡しするところに、手をつけた。
『…』
(残ってるなぁ)
もう冷たくなっている親子丼が置いてあり、虫が入らないように網が被せてあった。
でも、一切手をつけていない。
ただミカンの皮だけが隣に置いており、それは食べたようだ。
『昨日はミカンか。Q様ミカンが好きなんですか?』
「……」
私が声をかけても、彼は人形を抱きしめていた。
こちらを気にしているようだが、話す気配は無かった。
とりあえず昨日の物は退けて、私の作った料理をセットした。
『これから朝食担当は私になりました。
とりあえず、何を食べるか分からなかったから、おにぎりにしました。お腹すいたら食べてね』
「……」
そう言って渡した。
でも彼は動くことはなく、ただじっと見ているだけ。
(お腹空いてるのかな、空いてないのかな?)
ただ瞳にはまだ濁っていて、孤独を抱えていた。
そんなことを横目に、私はその場で自分で作ったおにぎりを食べた。
『あ、ご飯はこれから私もここで食べます』
「………」
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2023年10月2日 7時