【文スト】才能なしの救い (ページ20)

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『はい、心に刻みます』

私は少し頭を下げた。
すると視界にはエリス様が不安そうに私を見ていた。

(嗚呼、心配してくれてたんだ)

Q様の心配ばかりで、エリス様の視線には気づかなかった。
こんなにも気にかけてくれていて、過去を思い出すのは辞めた。

そして、私は優しく微笑んだ。

『ありがとう、エリス様』

そう言いつつ、優しく髪を撫でた。
サラサラな髪に指を通すと、エリス様は笑顔で私に抱きついてくれた。

『太宰様もありがとうございます』
「…別に、私は何もしてないよ」

＿＿＿
＿＿
＿

首領室に戻ると、そこには森様が窓の外を見ていた。
ノックせずに帰ってきたので、ビックリすると「どうだったかい？」と話し掛けてきた。

「ポートマフィアは知れたかな？」
『は、はい！ありがとうございます』

バッ！と頭を下げると、森様は優しく微笑んでくれた。
そしてそのままエリス様に手を引かれ、隣の部屋に戻った。

鴎外は去った2人を見つめ、椅子に座った。

「さて、太宰君。報告してくれるかい」
「言われた通り、Qを見せたよ」

太宰は、はぁ…と深くため息をついた。
＿＿これは彼女にQを見せる為だけに動いたマフィアの説明だった。
変な情報を与えないように太宰が立ち、誘導する。
ただそれだけだった。

「それで、Qに反応は？」
「興味はあるが動く気配は無い」

「ふむ…A君を買いかぶり過ぎたかな」

鴎外は深く考えるように目を閉じた。

＿須田Aには人を操る能力がある。
異能力があるとかではなく、自然と周りが彼女に手を差し出すということだ。

平凡な彼女は辛い過去があり、人を見つめる目が他人よりとても敏感だ。

そのため、正しく確実に人を変える。
エリスちゃんがそのいい例だ。
彼女は人間ではない鴎外の異能力だが、鴎外に楯突くくらいには自我を持ち、彼女を守ろうと動いた。

「……彼女がうまくQを操作できるといいんだが……」