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「お姉さん、だぁれ?」
ふとそんな可愛らしい声が聞こえた。
目を向けるとエリス様が自信満々に「彼女はAよ!」と代わりに答えてくれていた。
一礼すると、彼は興味ありげに私を見ていた。
「Aはワタシのメイドなのよ」
そう説明され、私が彼に近づこうとすると、ふいに止められた。
振り返ると太宰様は「気をつけて」と忠告の言葉を受け取った。
『は、はい…?』
(何に気をつけるんだろう?)
そんなことを思いつつ、エリス様の隣に座った。
そして目線を合わせた。
彼の目はじーっと私を見つめ、目が合うと微笑んだ。
『改めて、私は須田Aと言います。
よろしくお願いします。Q様』
そう言って手を差し出した。
牢の中に手を差し込み、距離を取っている彼が握りやすいようにした。
「…」
すると急に腕を掴まれた。
目を向けると、エリス様が真剣な顔をして掴んでいた。
「A、触れちゃダメよ」
『どうして?』
「Qの異能にかかってしまうわ」
「Qは危険なの」とエリス様はそう言って私の腕を降ろそうとした。
ふいに、彼に視線を向けると、彼は大事そうに人形を抱きしめていた。
_一人ぼっちの濁った瞳。
彼はそんな瞳をしながら奥で座っていた。
低いベットに腰掛けて座っており、先程から全く動いていない。
(こんな小さな子が…また暗い瞳をしてる)
エリス様と同じような10歳も行ってなさそうな子供。
腕は細く、声にも張りがなかった。
_ずっとここに捕らわれているんだろう。
『大丈夫だよ』
「…」
私がそう声をかけると、Q様の視線が少し私に向いた。
目が合うと、私は微笑んだ。
そしてもう一度手を差し出した。
『私、Q様と仲良くしたいんだ。こっちに来ない?』
「A!
Qは本当に恐ろしい異能を持っているのよ」
隣ではエリス様がそう怒った。
逆の手で彼女を撫で、とりあえず落ち着かせた。
『大丈夫だよ。エリス様』
「何を根拠にっ!Aは知らないだけだわ…」
ふと、エリス様は悲しそうにそう声を上げた。
泣きそうな瞳に、私はQ様に差し出した手を、エリス様を抱きしめるために使った。。
「…」
『分かった。そこまで言うならしない』
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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//
作成日時:2023年10月2日 7時