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身支度が終わると、机に座らせて待っててもらった。
まだ料理は途中で残りはスープだけだ。
トーストを2枚焼き上げ、バターを塗った。


「Aはいつも料理するの?」


ふと、エリス様が不思議そうに私を見ていた。
彼女の方に目線を向けるとビックリしていて『はい』と丁寧に答えた。


『人に出せる料理は無いんですけどね』


私ができるのは簡単なことまで。

パンを焼く、ご飯を炊く、何かを炒める、汁物を作る__そんな程度だけ。
蒸す、煮るなどは、したことも無い。


ピピピピー


そんな音がなり、スープが出来上がったようだ。
味見をして、美味しければおたまを使ってエリス様の分も用意した。

コトン、と小さく音を立ててスープを置き、エリス様の前に座った。


「誰かの手料理なんて久しぶりだわ」


ふと、エリス様はそう言った。
嬉しそうに言葉を発し、2.3品しかない質素な食卓に感動していた。


(昨日みたいに豪華な料理がいいんだけどなぁ)


私にはそんな技術ない。


「食べていい?」
『はい、一緒に食べましょうか』


「『いただきます』」と声を上げて、一緒に食べた。
朝食を誰かと摂るのは初めてで斬新だった。


(…あれ?)


ふと、私は不思議に思った。
どうしてエリス様には"お母様"が居ないのだろう?


(お父様は森鴎外様…だよね?)


結婚と言う言葉を知っていながら、手料理なんて久しぶり_だなんて。
エリス様のお母様は一体どこにいるのだろうか?


『エリス様』
「ん?」


声をかけたエリス様はこんな質素の料理を本当に美味しそうに食べていた。

パンの上には均一じゃないバター。
適当に切った野菜が入ったスープ。
そして少しの副菜。

これは全然手が入ってない料理。
"手抜きだ"と叫ばれても仕方ないとでも言えるのに、エリス様は分かっていない。


『…美味しいですか?』
「もちろんよ!」

『良かったです』


私はすぐに微笑んだ。
そしてパンの端っこを齧った。


(…エリス様のお母様は…もう居ないのかな…?)


明らかに愛情不足。
こんな質素の料理も楽しそうに食べるなんてオカシイ。


(ちゃんと、教えていかなきゃ。)

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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//  
作成日時:2023年10月2日 7時

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