【文スト】記憶喪失の私の勝ち方始 (ページ13)

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出来事1 ページ13

「受け取ってないよ」
『……そうですか』

(なにか前の私が残してるかと思ったけど…)

残せたのはAだけってことか。
武装探偵社について全く策がないな。

私が深く考えている間、太宰さんはじーっとこちらを見ていた。
様子を伺っているのか、私の存在を疑っているのか。

(彼は絶対なにか私について深く知っている)

それだけはわかる。
私は顔を上げると、太宰さんと目が合った。

『私の顔になにか付いてますか？』

(視線がうっとおしい)

思わず睨むまでとは行かないがガン飛ばしていると、彼は目を丸くした。

「！
いや、君は本当にA見たいだなぁとね」

『本人なので』

彼は私のことをやっと信じたのかニコニコ薄ら笑いをしていた。
本当の顔はこちらなのだろう。

「…うふふ、じゃぁこれは覚えてるかい？」
『？』

彼がそういった途端、私の顔は無理やり彼に向かせられた。
そして腰に手が回ってきて、そばに抱き寄せられた。

(な、なっ！？)

思わずビックリすると、彼はそんな私を遊ぶかのように耳元で囁いてきた。

「私たちは恋人だったのだよ」
『え』
「はい！？」

「何言って…」と中島さんが驚いていた。
ということは、これはまるっきり嘘だ。
＿＿思わずため息を付くと、彼は「どうだい？」と笑っていた。

(こんなことして、一体何になるのか？)

そう思い手グーにしてぶん殴ろうとしたが、私は呆気にとられた。
体がとても暑い。
それに鼻が痛い…無意識で噛んでる歯も痛かった。

「「！」」
『……なに、これ……泣いてるの？』

体を触ると、また涙を零していた。
思わず頭を触り、呆れてしまった。

(この体、脆すぎる)

「す、すまない…度の過ぎたからかいだったね…」
『…？』

ふと、彼を見ると本当に申し訳なさそうに言った。
……先程のケラケラ笑っていた顔はどうした。
中島さんに至ってはまたまた不安そうに私を見ていた。

『…太宰さん、過去の私と何かあったんですか？』
「まぁね」

『何があったんですか？？』