絶対命令【文スト】 (ページ45)

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ｺﾝｺﾝｺﾝ_

私は大きな音を立ててノックをした。
中から返事はなかった。

私はドアを開けて中を見ると、そこには彼が居た。
ベットに座りかけ顔をうむつかせていた。

「何の用だ」

ひどく怒った冷たい声が部屋に響いた。
私はそんなこと関係なく彼のそばにある机の上におぼんを置いた。

『ご飯です。以上です』
「……」

『おやすみなさい』

そう言ってドアを閉めた。
ヒヤヒヤした心臓を抑えて、その後寝落ちるまで書類仕事に手をつけた。

(心に溜め込む主様は3人目…)

ため息をついた。

____
__
_

ぼんやりと目が開いた。
いつも見える天井にまだ日傘したばかりの朝日が見えた。

「…」

目覚めたのは太宰治。彼だった。
現在朝5時。
眠れたのは2時とまた眠れない日々だった。
大きくため息を着くと共に、目線を反らせば見慣れないものがあった。

…昨日の晩御飯だ。

秘書になったばかりの彼女の手作りだろう。

「はぁ…余計なことばかり…」

彼はあまり彼女が好きじゃなかった。

誰も映さない真っ黒な目に、全く動かない表情。
唯一面白そうな耳としっぽには触れれないことだからだ。

それに本当に信頼してるわけじゃない。
彼女の主様になれば彼女を使えるのが都合がいいと思ったからだ。
強かは確かにあるからだけだ。

(いっそ、これに毒があって殺してくれたらいいのに)

そんな期待をかすかに浮かべて食事に手を付けた。
1口、口に運んだ。

「…！」

味は本当に平凡的だった。
逆にまずいほど、平凡的な味だった。
時間が経ちお粥は冷たくて本当に美味しくない。

でも、私のために作られたような気がした。
___みんな向けではなく私のためだけの料理。

それが何とも不思議な気持ちだった。

入っている具材は栄養的で食べやすいように小さくしてあった。
他にも食べていくと真ん中の方に可愛いうさぎ型の人参が隠れてたりと、冷たくてまずいはずで、いつもなら簡単に人の物なんか捨てるのに、これは出来なかった。

「…あれ？」

はっ！とした時にはお椀にお粥は消えていた。
ただの料理なのに、変な優しさがどこかひどく私に刺さって辛かった。

(…あんな目でも優しい料理は作れるんだな…)