絶対命令【文スト】 (ページ44)

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そう言って2つお椀を取り、それぞれに注いだ。
そしてカウンター所らしきところに隣で座った。
手を合わせて『いただきます』と口に出し、お粥を頂いた。

『まずまずですね』

良くも悪くもない味。
まぁ平凡的な味と言えば大当たりだろう。

「…」
『最近いいものを食べすぎて舌が冴えてしまいました』

『貴方はどうですか？』と顔を横に向けると目を丸くした。
彼女は涙を出して泣いていた。
1口は食べたようでスプーンを持っては体が固まっていた。

『……』

私はじーっと見てから視線を逸らした。
別に何と思われてもいい。
例え、それが良い印象でも、悪い印象でも、主様にだけ気にしてもらえればそれで幸せだから。

そう思いつつ私がするっと食べ終わると、彼女は泣き終えたのか手を進めていた。

『では、先に席を立たしてもらいま__？』

ふと、尾崎様は手を止めて私の手首を掴んだ。
思わず彼女の目を見ると、なにかを私に望むような顔をしていた。

「まだ居てくれぬか」

寂しそうにそう聞こえた。
ほんの少しの甘え。
__彼女の胃袋を掴んでしまったみたいで気に入られたのかな

分からない。
急にそんなことを言って急に泣いて、私には理解できない。

『嫌です』
「そうか…」

そう言うが彼女は手を離さなかった。
仕方なく自分で払うと、食器を持って流しに置いた。
そして使った分を洗いまた新しい食器を取っては太宰様用に残ったお粥を移した。

「それは太宰の分か？」
『はい。ものすごく疲れてるように見えたので』

「…契約主は太宰になったそうじゃの」

『……』

ふと尾崎様はそう言った。
彼女を見ると消えてしまいそうだった、だから視線を逸らした。

「私に変えることは出来んのか？」

『できません。
太宰様が契約を破られない限り変えることはできません』

そう言って手を進めた。
おぼんを用意して茶碗を乗せてスプーンを乗せ、お茶を置いて完成。

両手を持ちドアに足を進めた。

『失礼しました』
「…嗚呼」

彼女は昔の男性を思い出し、少し泣き続けた。

(ちょっと酷いことしちゃったかな)