絶対命令【文スト】 (ページ5)

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『太宰治は足止めしました』

両手を広げてそう言った。
戦っている二人の間に入り、主を守るような動き。
彼女がふいに振り返ると、後ろの大きな怪我人が出ているのが目に付いた。

『ぁ…嘘…』

木の影の奥には足から出血しているマフィア員が居た。
2人共銃弾が入ってしまったようで、動けずにいた。

ただそれだけ。
しかし、彼女はそんな彼らを見て大きく取り乱した。

大胆だった手の動きを小さく縮こまり、中原中也に大胆に背中を見せた。

「おい！」
『あ、るじ、さま…ゆる、してくださ、い』

そんな気弱な声が聞こえた。
寂しそうで、絶望的で、悲観的な声。

思わず中原中也は彼女を見た。

「……」

「許すから僕だけは守るつー約束だろ！
おい、お前は盾だろ！」

ドン！とお腹を蹴られて彼女はフラフラしながらも立ち上がった。
そして殺意を持った目で中原中也を見ていた。

『はい。私は貴方様の盾です』

ナイフを持ち直し、中原中也と1対1になった。
例の男は木の影に行き、マフィア員と話し始めた。

ナイフで素早く近づくと、中原中也はそれを歯で噛んで受け止めた。

「死なねぇ、異能力か？」
『……いいえ』

彼女は素早くナイフを引き、襲いかかろうとすると音よりも早い銃弾が彼女の腕に刺さった。
血が垂れると共に動きも1瞬遅くなった。

「死ぬのは有限か？」
『…はい。だから、貴方は私を殺せます。』

そう話した途端、後ろから大きな声が聞こえた。
それは例の男だった。

「おい！プランbだ！」
『！』

そう聞こえると彼女は目を丸くした。
だが、すぐに理解し、ナイフを中原中也に投げつけた。
異能力ですぐ受け止めると、彼女はその場から離れた。

『主様、お手を』
「嗚呼。すまねぇな、お前ら、やっぱ無理だわ」

例の男が彼女の手をとると彼女の耳にピョコンとキツネの耳が現れた。
それと共に2人は浮き出した。

残されたマフィア員は「ええ！？」と声を上げていた。

＿__逃走。
プランbは2人だけの生き残りだ。