絶対命令【文スト】 (ページ38)

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太宰治が外食に連れて来たのはお寿司屋さんだった。
回らない高級店のお寿司。
マフィアで取引に使う時に色んな高級店を回るため、2人はなんの躊躇いもなく中へ入って行った。

「死なない程度に食べてくれ」
『はい。容赦なくいただきますね』

そう言って彼女はお寿司を頼み、目の前で大将は握って差し出した。
彼女は1口食べ、表情は変わらないままだが目を少し輝かせた。

彼はただ彼女が食べているところを見ているだけだった。
別に何も頼もうとはせず、食べている横顔を見るだけ。
__不意に彼女は彼を気にかけた。

『太宰様は食べないんでしょうか？』

ここに来て20分もしたのに食べる気がないのだろうか。
今は昼だ。
朝ごはんを食べていたとしても12時を回ったからお腹が空いてくるはずだ。
そんな時に食べ物をチラつかせるとお腹が空くはずだろう。

すると彼は少し悩んで首を横に振った。

「いや、食べるよ」
『…少食なんですね』

「まぁね。最近食欲が無くて困ってるんだよ」

『そうですか』

と言いつつ、注文は進んで行った。
彼女は満足気に食べた時、彼は食事を頂いていた。

『…食欲が無いのは眠れないせいですか？』
「！」

ふと、彼女は口元を軽く拭きながらそう言った。
彼が目を向けると、彼女も目を見つめ、少し下を見た。

『隈が薄くできています。
昨日いや2日前でも、初めて出会った時もずっと隈がありました。』

「…よく分かったね」

『睡眠は大切です…あと気になりましたから
隈があったのは貴方だけなので』

そう言って彼女は最後にあがりを飲んだ。
そして2人は立ち上がり、支払いは彼がしてくれた。

「ほぼ稲荷だったけれど、稲荷好きなのかい？」
『はい』
「本当のキツネのようだ。」

『…確かに言われてみればキツネと好みまで一緒ですね』

そんな会話をしてお店から出た。
彼は私の様子を伺う様にずっと横目で見てきた。
足の速さも少し遅く、何かあっても瞬時に逃げれるようにしているのだろう。

(…まだ太宰様に完璧に信頼は得てないかぁ……)